有田芳生(参院議員)

 「今日中に決着をつけるから、金曜日だからって飲みに行ってられないよ」

 政権関係者がある記者にこう語ったのは3月9日のことだった。「決着」とは朝日新聞が3月2日にスクープした森友学園決裁文書の書き換え疑惑のことである。朝日新聞は9日付朝刊で「森友文書 項目ごと消える」「貸付契約までの経緯 売買決済調書 7ページから5ページに」とさらに詳しく1面トップ記事で報じていた。

 2日の朝日新聞記事が文書を「入手し、確認した」のではなく、「確認した」という表現だったため、本当に入手した上での記事なのだろうかと臆測が流れていた。ところが、毎日新聞が3月8日付夕刊で、情報公開請求で入手した文書に「本件の特殊性」とあることを報じた。朝日新聞が報じた文書とは別の文書である。翌9日の朝日新聞報道は、他紙との競争で「抜かれる」ことを避けるために新たな内容を報じたものだと思われる。

 だが、これで実際に朝日新聞が文書を入手していることが確実となった。にもかかわらず、安倍政権は一度国会に提出した捏造(ねつぞう)の可能性がある文書と同じ文書を3月8日に再び参院予算委員会理事会に提出した。まさに茶番である。ほとんどの野党が欠席する中で「空回し」(欠席した野党の質問時間が質疑なしに時間としてカウントされる)と呼ばれる委員会が開会された。極めて不正常な事態である。予算はすでに衆議院で可決されているから「30日ルール」で3月末には参議院でも成立する。しかし、森友文書をめぐって衆参両院で審議が進まない事態に直面したのである。国会を正常化するためにはどうしても「決着」が必要だった。

森友学園問題に関して記者の取材に応じる麻生太郎財務相
=2018年3月12日、東京都千代田区の財務省
森友学園問題に関して記者の取材に応じる麻生太郎財務相 =2018年3月12日、東京都千代田区の財務省
 9日夜には麻生太郎財務相が記者会見し、佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官(前理財局長)の辞任を発表、問題となった文書を12日に公表し、文書の書き換えを認めることが明らかになった。官邸と財務省はこれで問題に決着をつけるつもりだが、これは真相解明の序盤に他ならない。

 官邸は佐川氏が書き換えの指示を行ったとすることで問題の幕引きを図りたいのだろう。しかし官僚のありようとしてそれは成り立たない。民主党政権のとき、私は当時の菅直人元首相と拉致問題を中心に2人だけで3時間ほど話をしたことがある。そのとき、菅元首相が語った言葉を今でも覚えている。

 「官僚っていうのは政治家が指示しないと動かないんですよ」。薬害エイズ問題で官僚に資料を提出させた菅氏ならではの経験的発言でもあっただろう。