これが官僚の生態なのだ。森友学園問題も同じだ。刑法の有印公文書偽造・変造罪(懲役1年から10年)、公用文書毀棄罪(懲役3カ月から7年)にも問われる恐れのある行為を、複数の官僚が自らの発案で行うことには無理がある。それとも政治家への忖度(人の気持ちや考えをおしはかること)があったのか。それを推測できるのは森友問題が明らかになって以降の国会答弁の経過である。初めて森友問題を報じたのは朝日新聞だったが、それは2017年2月上旬のことだ。財務省によれば文書の書き換えが行われたのは同年2月下旬から4月までの間だという。

 その間に何があったのか。佐川理財局長(当時)は「(価格を)提示したこともないし、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」、麻生財務相も「特別なことではない」「法令に基づいてやっている」と答弁した。ところが改ざん前の文書には「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」「特例的な内容となる」「本件の特殊性」という記述があった。

 注目すべきことは「本件の特殊性」である。森友学園が開校予定だった小学校の名誉校長は安倍首相夫人の昭恵氏だった。夫人付の女性官僚(経産省)が森友学園への国有地売却に関して財務省に問い合わせしていたことも明らかになった。

欧州6カ国歴訪に出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人
=2018年1月12日、羽田空港
欧州6カ国歴訪に出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人 =2018年1月12日、羽田空港
 さらに安倍首相はこんな答弁も行っていた。「私や妻が関係していたということになれば、これはまさに私は間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げておきたい」 (2017年2月17日)。ところが決裁文書からは、昭恵夫人が「いい土地ですから前に進めてください」と籠池夫妻に語り、それが近畿財務局に伝えられたことも削除された。

 こうした経緯から見えてくるのは安倍首相夫人への慮(おもんばか)り、つまり「本件の特殊性」ではないのか。昭恵夫人と佐川前理財局長の国会への証人喚問は真相解明のための必須の課題である。

 森友学園問題が報じられ、国会でも質疑が行われてから1年が経過した。決裁文書の書き換えが行われたことが事実だったのだから、この1年余りの国会質疑の前提が覆った。ことは民主主義の蹂躙(じゅうりん)なのである。

 書き換えにかかわった官僚とそれを指示した官僚、任命権者の麻生財務相、さらにはその人事を認めた安倍首相の責任は極めて重い。国有地払い下げ疑惑の流れに総理夫人の存在があるのだから、安倍首相と与党は率先して真相解明に取り組む責任がある。