田村明子(ジャーナリスト)

 6月25日の良く晴れ上がった日曜日、マンハッタンで今年も恒例のゲイプライドパレードが開催された。毎年6月の最終日曜日に開催されるこのパレード、現在では「NYC Pride March」が正式名。LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クイア)プライドパレードとも呼ばれている。

 ニューヨーカーはパレードが大好きで、ハロウィーンや感謝祭のような派手なものばかりではないが、1年中毎月どこかで必ずパレードをやっている。その種類もさまざまだ。
2017年6月、ニューヨークで行われたLGBTの権利と尊厳を訴えるパレードで「われわれは抗議する」との横断幕を持って行進する参加者(AP=共同)
2017年6月、ニューヨークで行われたLGBTの権利と尊厳を訴えるパレードで「われわれは抗議する」との横断幕を持って行進する参加者(AP=共同)
 3月のアイルランド系のお祭りSt. Patrick’s Day Paradeや、6月のThe National Puerto Rican Day Paradeのように、移民の祖国の文化を祝うパレード。

 夏の終わりを次げる9月の始めのLabor’s Day Paradeや、退役軍人に捧げる11月のVeteran’s Day Paradeのように、国民の祝日に行われるイベントパレード。ブルックリンのコニーアイランドで行われる、夏の始まりを宣言するMermaid Parade(人魚の仮装をした人々が集まる)のようにユニークなものもある。

 とはいえこのゲイプライドパレードは、ニューヨーカーにとって別格の、特別なイベントと言える。

 そもそもこのパレードがはじまるきっかけとなったのが、1969年にニューヨークで起きた事件だったからだ。

 今のニューヨークにとってゲイカルチャーは、欠かせないコミュニティの一部である。LGBTQの人々はごく自然に社会にとけこみ、大都会のニューヨークで伸び伸びと生きている。だがここに至るまで、先人たちの長い戦いがあった。

 19世紀後半から、ニューヨークにはすでにゲイコミュニティができていたそうだ。

 だがアメリカでは、近代まで同性愛行為はfelony(重罪)だったことをご存知だろうか。俗に言う、ソドミー法である。(正確に言うなら、同性間だけではなく、生殖につながらない「不自然」な性行為を禁じる法律)

 保守的な田舎から自由な空気を求めてニューヨークに人々が集まってくるのは、昔も今も変わっていない。筆者も20代の頃に、ノースカロライナでしばらく通った高校の上級生にマンハッタンで偶然行き会い、彼女が実はレズビアンで故郷に居場所がなく、ニューヨークに移住したという告白を聞いたことがある。

 60年代には、ウェストビレッジにいくつかゲイバーが出現した。だが正式なアルコール類販売ライセンスを持たずに営業していたところもあり、定期的に警察の踏み込み調査を受けて、逮捕者も出していたという。

 その一方、1967年にはコロンビア大学が全米の大学で初めて、生徒が結成したゲイ団体を公認するなど、徐々にリベラルな空気が社会に広がっていた時期である。

 1969年6月28日、クリストファーストリートにあったゲイバー、ストーンウォールインで、恒例の警察の手入れが行われた。だがこの日は差別されることに飽いていたゲイの人々は怒りを爆発させて警官に立ち向かい、3日間暴動が続いたのだという。

 英語でStonewall Riots, 日本語ではストーンウォールの反乱と呼ばれているこの事件。2015年に映画化もされたので、知っている人も多いだろう。

 その1年後、ニューヨーク、シカゴ、ロサンジェルスとサンフランシスコの4都市で、ストーンウォール事件の一周年を記念した初のゲイプライドパレードが開催されたのだという。