とはいえ、女性が好きだと自覚してからも、恋バナをするのは難しいものでした。なぜなら、恋バナをするときって、必ず「彼氏いるの?」と聞かれるからです。その時点で少し違和感がありますが、相手も決して悪気があるわけではないので難しいですよね。私の場合、男性の立場で彼女とお付き合いしているので、彼女を彼氏と置き換えて話すこともできない。なので、本当はもっとしゃべりたいこともあるし、恋もしているけれど、恋バナのときはごまかしてしまうことが多かったです。
レズビアンをカミングアウトしたときの心境を語る滝沢ななえ(瀧誠四郎撮影)
レズビアンをカミングアウトしたときの心境を語る滝沢ななえ氏(瀧誠四郎撮影)
 私は基本的にポジティブで、普通に明るく楽しく生きているので、テレビのドキュメンタリーのような深刻な話ではないですけど、もう一つ、日常で違和感があるとすれば、やっぱり結婚や出産の話ですね。私の妹はすごく家庭的で、ずっと結婚したいって言っているような子なので、いつも「ななえ、結婚しないの?」「子供かわいいよ」と私に言っていました。

 妹も、もちろん周りの友達も、結婚して、家庭があって、子供がいるっていう生活が幸せだと思っていたからこそ、いつか私にも幸せになってほしくて言ってくれたんだと思います。みんな悪気があるわけではなく、無意識にそう言ってくれますね。ただ、私にとっては興味がない話というか、私にとって幸せのカタチは結婚や出産ではなかったというだけなんです。

 プライベートではそういう小さな違和感もありましたが、バレーボール選手として、自分がセクシュアルマイノリティーだからといって何か不便があったり、嫌なことがあったりということはほとんどなかったです。自分がセクシュアルマイノリティーだからといって、何か競技に悪影響が出ることもありませんでした。同性愛者だからという理由で試合中にミスが増えるなんてことはないじゃないですか。

 一つあるとすれば、男性ファンに対しての罪悪感でした。私は現役時代、男性ファンが多くて、「ななえちゃん、かわいい」と言われると、だましているつもりはなくてもちょっと申し訳なく思っていました。

 表舞台に出る人間として、周りの反応、特に応援してくれている方々の目というのはどうしても気になると思います。ファンの方は、「この選手はこういう人だろうな」という自分なりのイメージを持っていて、そのイメージをあまり崩してはいけないという意識が当時は強かった。もしイメージと異なれば、どうしてもがっかりさせてしまうのではないかと考えていました。

 私自身も、ファンがあってのアスリートだと思っていたし、だからこそファンの方を大切にしたいと思っていたので、カミングアウトするより、イメージのままの「滝沢ななえ」でいる方がいいのかな、と思っていました。