そして同年、国際オリンピック委員会(IOC)がオリンピック憲章を改定し、「根本原則」第6項において「性別および性的指向」に関する差別禁止を表明したのも、これら一連のソチ冬季五輪期間に行われたさまざまな活動が大きな契機となってのことでした。

 私が初めて「プライドハウス」と出会ったのは、2015年夏にカナダで開かれた「プライドハウス・インターナショナル」の会合でした。パンアメリカン大会(南北アメリカ大陸の各国が参加)に合わせ、トロントのLGBTセンター「The 519」が期間限定で「プライドハウス」となり、2016年のリオ五輪、2018年の平昌冬季五輪での設立を目指すチームも参加しました。

 私が代表を務めるLGBTの支援団体「グッド・エイジング・エールズ」が、シェアハウス、カフェ、街のステーションなどの企画運営、職場づくりのカンファレンスやランニングイベントの開催をしていたこともあり、2020年の東京五輪に向け、日本での「プライドハウス」立ち上げを勧められました。

 会合では、「プライドハウス」の過去の取り組みや課題、実施に至るまでのノウハウがシェアされると同時に、各国各地の地域性・独自性を活かしながら、いかに持続可能な取り組みとして、その都度、バトンを渡していくことができるかについて議論されました。

 また、直近のリオ五輪、平昌五輪、そして2020年東京五輪での「プライドハウス」においては、施設としての大小や形にとらわれず、ホスピタリティ、情報発信、自由参加可能なスポーツ企画、教育プログラムという4つの機能の実現を目標にしたい、という緩やかな意志の共有もありました。

 個人的には、ブラジルから参加したジェフ・ソウザさん、韓国から参加したキャンディー・ダリム・ユンさんとは意気投合し、「お互いのプライドハウス実現をサポートし合おう!」と誓い、トロント以降も連絡を取り合う仲となりました。
昨年のリオデジャネイロ五輪で設置されたLGBTの拠点「プライドハウス」で写真に納まる松中権さん(右)(筆者提供)
昨年のリオデジャネイロ五輪で設置されたLGBTの拠点「プライドハウス」で写真に納まる松中権さん(右)(筆者提供)
 そして2016年夏、仕事の関係でリオに滞在していた私は、五輪開催に合わせてジェフさんたちが立ち上げた「プライドハウス」のオープニングイベントに参加しました。その際、ジェフさんから、国外に発信されるブラジルの陽気なプライドパレードのイメージとは裏腹に、国内でのLGBTなどへの政府や自治体や企業のスタンスは非常にドライだと聞きました。最終的にどこからもサポートを得られず、「プライドハウス」はトランスジェンダー女性のシェルターの一部を借りて実施するなど、苦労が多かったようです。