とはいえ、リオ五輪では「カミングアウトしたオリンピアンが過去最大数」「試合後に同性カップルのプロポーズ」など、明るいニュースが報道されました。ただ、現在も年間数百人のトランスジェンダー女性がヘイトクライムで殺害されているなど、ブラジルのLGBTの実情についてはほとんど語られることがなかったのも現実です。

 こうした流れの中で開かれた平昌五輪は、キャンディーさんをはじめとする韓国チームが、五輪に向けて、いくつもの取り組みを実施してきました。あまり報道されていませんが、平昌五輪の倫理憲章に記された、LGBTなどのコミュニティーへの差別禁止条項の周知や、期間中の差別被害のモニタリング機能を果たすことを宣言したほか、具体的な被害状況を寄せられる通報フォームも立ち上げました。

 また、「正しい表現や単語を使う」「存在を居ないことにしない」「HIV/AIDSの正確な情報を提供する」など、オリンピック史上初めて、LGBTなどに関するメディア向けの表現ガイドラインの提供も行っています。

 その一方で、韓国ではキリスト教信者や保守層のLGBTなどに対する根強い抵抗によるコミュニティーとの衝突もあります。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が選挙前に「同性愛に反対」と発言したことへの抗議活動で逮捕者も出ており、国内で強力な支援体制を得ることができず、本格的な「プライドハウス」の設置には至りませんでした。
左からプライドハウスインターナショナルのケフ・セネットさん、韓国プライドハウス担当のキャンディーさん、松中権さん(筆者提供)
左からプライドハウスインターナショナルのケフ・セネットさん、韓国プライドハウス担当のキャンディーさん、松中権さん(筆者提供)
 そして迎える2020年東京五輪はどうでしょうか。世界各国で相次ぐ同性婚の合法化の流れ、IOCによるトランスジェンダー選手の参加条件の明確化など、国内外を合わせてもLGBTなどに関する社会的関心が高まっており、集大成の時期になると言えるでしょう。

 だからこそ、日本でも設立を目指す「プライドハウス」は、専門家や企業、自治体、教育機関、メディアなど、より多くの機関が関わっていくべきだと考えています。差別や偏見を具体的に取り除き、来場者に「安心」をいかに提供できるか。実際に起こっている被害をキャッチし、当事者を守り、いかに「救済」することができるか。そして、社会が性に関する多様性を受け止め、いかに多くの人が互いを「祝祭」し、リスペクトしあえる場を作りあげることができるかが重要です。

 これらの役割を担える「プライドハウス」を模索しつつ、組織委員会と連携し当事者選手に向けた取り組みだけでなく、五輪後も形を変えて機能を継承していけるよう、みなさんとともに議論し、実現していきたいと考えています。

 先日、東京都議会での一般質問を受けて、東京都としてオリンピック憲章の理念に基づく条例を制定する動きが出てきたというニュースが飛び込んできました。単なる理念条例にとどまることなく、LGBTなどに関する担当部署の設置を視野に入れ、2018年度内の成立を目指すようです。こうした2020年東京五輪に向けた動きを生かしていくことが、私たちの使命だと考えています。