疑問2 小保方さんは、胎盤形成を予想したのか?


 疑問1は科学上の疑問であるが、これに加えて、「小保方さんがES細胞をSTAP細胞と偽って渡し、マウスの初期胚に混入させた」という仮説には不合理がある。

 先ず先述したように、「ES細胞は胎盤を作らない」というのは発生生物学の常識である。当然、小保方さんも若山教授もその認識は共有していたはずである。それを前提に考えると、次のような疑問が生じる。

 仮に、小保方さんがES細胞をSTAP細胞だと偽って若山研究室に渡したとする。その場合、小保方さんは、渡したES細胞がマウスの受精卵に注入されたあと、その細胞はES細胞なのだから、胎盤は形成しないことを予想しているはずである。

 しかし事実として、若山教授は小保方さんから受け取った細胞を処理してマウスの受精卵に注入したあと、小保方さんから渡された細胞が胎盤を形成したと判断した。この意味を考えてほしい。

 小保方さんが、ES細胞をSTAP細胞と偽って若山教授に渡したのであれば、小保方さんは渡した細胞が胎盤を形成するとは予想していなかったはずである。しかし、若山教授は胎盤が形成されたと判断した。その結果、小保方さんがマウスから作製し、若山教授に渡した細胞は胎盤をも形成する新しい万能細胞だと判断されたのである。

 小保方さんが期待もしなかったことが若山教授の研究室で起こり、その結果、小保方さんは偶然(!)、胎盤をも形成する新しい万能細胞を作製したという名誉を得たことになる。こんな「成功」が偶然に起きたのだろうか? 

疑問3 小保方さんはES細胞を混入する必要があったか? 


 疑問2に対して予想される反論はこうだ。 「小保方さんは、胎盤形成までは狙っていなかった。仮に胎盤形成は起こらず、胎児の形成だけが起こっても、遺伝子操作をせずに、酸処理だけでES細胞のような万能細胞を作るのに成功したことを若山教授に認めさせることができれば、それだけで大きな栄誉と地位を得られる研究成果になった。だから、若山教授が胎盤でない細胞塊を胎盤と見誤ったのは単なる幸運だった」

 とする仮説である。

 しかし、これもおかしい。なぜならこの仮説は、小保方さんがSTAP細胞が存在しないと思っていることを前提にしているからである。

 考えても見てほしい。STAP細胞が本当に存在するかしないかは別として、小保方さんはSTAP細胞が存在すると思ったから実験に取り組んできたのではないだろうか? 科学上の真実が何であるかはともかくとして、小保方さんはそう信じてきたのではないだろうか?

 小保方さんは、マウスの脾臓から得た細胞を酸で処理すると、細胞の初期化が起こった際に活性化し、細胞を緑色に発光させるOct4─GFPという遺伝子が活性化し、細胞が緑色に発光するのを確認した(彼女が記者会見で言った「STAP細胞作製に200回ほど成功している」という発言は、この細胞の発光を200回確認した、という意味であろうと私は推察する)。

 この標識遺伝子によって細胞が緑色に発光したからといって、必ずしも細胞が初期化されているわけではない。細胞が死んでいく際にもこの発光現象は起きることがある。酸処理で死んでいく細胞を見ただけかもしれないことは、STAP細胞の発表直後から散々指摘されてきたとおりである。