野党指導者でも、エリツィン政権時の第1副首相だったボリス・ネムツォフが2015年にモスクワ市内で射殺されるなど、有力者の暗殺や不審死が相次いだ。プーチン政権を批判するジャーナリストも同様で、2006年に反政府系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の著名記者アンナ・ポリトコフスカヤが自宅アパートのエレベーター内で射殺されるなど、毎年複数人のペースで殺害されている。元情報機関員だったアレクサンドル・リトビネンコが亡命先のイギリスで放射性物質により暗殺されたのも2006年だ。
モスクワ郊外の民間訓練場で射撃訓練に使われたロシア連邦保安局(FSB)元幹部のアレクサンドル・リトビネンコ氏の顔写真を使った標的※テレビ画像複写 (撮影年月日不明)
モスクワ郊外の民間訓練場で射撃訓練に使われたロシア連邦保安局(FSB)元幹部のアレクサンドル・リトビネンコ氏の顔写真を使った標的※テレビ画像複写 (撮影年月日不明)
 こうしたプーチン批判派で、国内外で殺害された人数は30人以上に上る。今回、旧ソ連が開発した軍事用神経剤「ノビチョク」で暗殺未遂に遭った元情報機関員、セルゲイ・スクリパリのように、殺害されないまでも「攻撃」された人数を含めると、少なくとも40人以上が被害を受けている。多くのケースで犯人は不明だが、これだけプーチン批判派ばかりが襲撃されるというのは異常であり、ロシア情報機関による犯行とみていいだろう。このように、暗殺も厭(いと)わぬ反対派潰しを、プーチンは権力奪取後から一貫して続けているのだ。

 もっとも、プーチンが「殺害」した人数は、こんなものではない。前述した第2次チェチェン戦争では、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の調査では、一般住民の死者2万5000人に加え、おそらく死亡したであろう行方不明者が5000人。つまり計約3万人もの一般住民が、プーチンが命令した戦争により殺害された。

 また、既に7年も続いているシリア紛争では、最も現地情報を集積している非政府組織(NGO)「シリア人権監視団」によれば、プーチンの命令でロシア軍が直接殺害したシリアの一般住民は、身元が確認された人だけで約7000人。ただし、ロシアの支援によって生き延びたアサド独裁政権陣営が、一般住民を少なくとも12万8000人以上を殺戮(さつりく)しており、合わせて13万5000人以上の一般住人が犠牲になっている。これもプーチンが関与したといっても過言ではないだろう。

 他にも前述したグルジア(ジョージア)戦争や、今も続いている東ウクライナでの紛争などを含めれば、プーチンは数十万人もの命を平然と奪っている「21世紀最凶の大量殺人犯」に他ならない。

 そんなプーチンの特徴は、平然と嘘がつけることだ。クリミアにロシア軍を送っておきながら「ロシア軍の兵士は一人もいない」と断言し、シリア空爆に踏み切る直前まで「軍事介入などしない」と宣言。シリアではその後も前述した一般住民の殺戮が続いたが、一貫して「攻撃対象はテロリストだけ。一般住民はまったく攻撃していない」と述べている。