そんなプーチンのメンタリティーは、まさに欺瞞(ぎまん)と詭弁(きべん)の塊だった旧ソ連共産党とKGBの遺伝だ。3月11日に公開されたプーチン賛美ドキュメンタリー映画『プーチン』で、彼は自分の祖父がレーニンとスターリンの料理人だったことを誇示しているが、つまりはレーニンやスターリンに憧憬(しょうけい)があるのだろう。また、プーチンは14歳でKGBに採用の方法を聞きに行ったという逸話があるくらい、少年時代からKGBに憧れていたことも広く知られている。

 目的のためには殺人も平然と行い、平然と嘘もつく。嘘まみれの宣伝で自国民を洗脳するばかりか、嘘を拡散して世界を操ろうとする。プーチンの情報機関は、米大統領選のときにSNS(会員制交流サイト)でニセ情報を拡散して介入したことにとどまらない。イギリスのEU離脱やスペインのカタルーニャ州分離独立騒動でも大規模な扇動工作をしていたことが判明している。

 また、欧米各国で移民排斥、宗教差別、極右運動を扇動し、社会の分断を図っているが、欧州の極右勢力には直接、資金投入して工作をかけていることも分かっている。これは、冷戦時代にKGBが正式な作戦として米帝国主義陰謀論やユダヤ陰謀論などを西側メディアに仕掛けたり、西側の左翼組織に極秘裏に資金を投入したりといった裏工作をしてきたことの、まさに再現である。

 冷戦当時はもっぱら左翼が工作対象だったが、現在ロシア情報機関に操られているのは右翼が多い。欧州の極右などは軒並み反米で、プーチン支持者になっている。私たちがネット上で日々接している言説でも、社会の憎悪を煽るような情報は、その出所がロシア情報機関発のフェイクニュースであることが珍しくない。

モスクワ中心部の広場での集会で演説するロシアのプーチン大統領=2018年 3月18日
モスクワ中心部の広場での集会で演説するロシアのプーチン大統領=2018年 3月18日
 プーチンは権力を手に入れた瞬間からロシア国内で強権的な支配を一貫して強化してきたが、2010年代からは世界にもその邪悪な手を本格的に広げてきた。

 3月18日の大統領選で再選され、少なくとも今後6年間はプーチン時代が続く。抵抗する者たちは暗殺され、紛争地の罪なき人々は虐殺される。そして社会には悪意のフェイクニュースが溢(あふ)れ、差別や憎悪が広がっていくことになるのである。