米露間では近年、軍備管理協議が行われておらず、米露交渉を再開し、ロシアが米国と対等の核大国であることを内外にアピールする狙いのようだ。新型核兵器計画は、交渉への呼び水とも取れる。

 「誰もロシアに耳を貸さなかった。今こそ聞くがいい」と述べたことも、ロシアの孤立感を浮き彫りにした。友好国の中国を含め、ロシアへの関心が世界的に低下し、無視されていることへの焦りが読み取れる。

 一方で、米政府は好戦的な演説に反発した。メルケル独首相も憂慮し、トランプ大統領と電話協議を行った。米露・欧露関係はこの演説でさらに険悪化しそうだ。ただし関係悪化は、国民の危機意識に利用でき、選挙戦にはプラスに働いた。
 
 また、英国で起きた元ロシア軍スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏の暗殺未遂事件も決して無関係とは言えないだろう。スクリパリ氏は、英南西部ソールズベリーの公園で3月5日、娘とみられる30代の女性と意識不明で見つかり、重体となった。病院によれば、「正体不明の物質」にさらされたという。
意識不明の状態で発見されたセルゲイ・スクリパリ氏(ロイター)
意識不明の状態で発見されたセルゲイ・スクリパリ氏(ロイター)
 スクリパリ氏は、2004年に英国の二重スパイだったとして逮捕され、裁判で自供した。懲役刑を受けたが、2010年に米国とのスパイ交換釈放で英国に亡命していた。今回の事件は2006年、英国亡命中にロンドンで放射性物質ポロニウムを盛られて死亡したロシアの元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏の事件を想起させる。

 リトビネンコ氏はチェチェン戦争に絡むプーチン政権の闇を告発し、ロシアの裁判所で欠席裁判の末に有罪となった。英捜査当局は元ロシア情報機関員のアンドレイ・ルゴボイ氏の犯行と断定。身柄引き渡しを要求したが、同氏はその後下院議員に当選しており、ロシア側は不逮捕特権を盾に送還を拒否した。英政府の調査委は「プーチン大統領が犯行を了承したとみられる」と主張した。

 忠誠心を重視する大統領はかつて「国家への裏切り者には悲劇的な最期が待っている」と述べたことがあり、反逆者への憎しみは人一倍強い。今回の事件は謎が多いが、大統領選のタイミングと奇妙に一致する。欧米との関係悪化を演出し、政権への求心力を高める工作だったという見方も出てきそうだ。