兵頭慎治(防衛省防衛研究所 地域研究部長)

 クリミア半島の併合4周年記念にあたる2018年3月18日、ロシアにおいて大統領選挙が実施され、現職のプーチン大統領が再選された。これにより、事実上の最高指導者だった首相時代(2008~2012年)を含めて、2000年に発足したプーチン体制は四半世紀近く存続することになる。

 プーチン氏は65歳、実はロシア男性の平均寿命に近づいている。憲法規定上、大統領の三選が禁じられているため、中国の習近平国家主席と同じく憲法を改正して政権延命を図るニュアンスは残しながらも、プーチン政権は2024年5月に幕を閉じる可能性が大きいとみられる。

 2000年から続くプーチン体制は盤石であったように見えるが、経済の低迷、潜在的な反プーチン機運、米露関係の悪化など、プーチン政権最後の6年間はいばらの道をたどることになるだろう。

 経済面では、2017年にマイナス成長から脱したものの、ロシアの国内総生産(GDP)は世界第12位にとどまり、資源価格の低迷や欧米からの経済制裁によりウクライナ危機前後の3年間でGDPは半減した。国民の可処分所得は4年連続で落ち込み、さらにこの4年間で貧困層が400万人以上増加するなど、国民の生活実感は悪化している。油価の高騰や経済制裁の緩和が見込めない以上、資源に過度に依存するロシア経済の未来は暗い。

 プーチン退任という「2024年の壁」が待ち受けているため、遅かれ早かれ、プーチン氏のレームダック(死に体)化は不可避である。政権後半には、後継者探しをはじめとしたポスト・プーチン体制の模索が本格化する。

 そうなれば、大統領交代というレジーム・チェンジに向けて、クレムリンをめぐる権力闘争や国民の間に眠る潜在的な反プーチン機運、イスラム過激勢力によるテロなどがむき出しとなり、内政が混乱する危険もある。領土問題で政治決断が求められる日露間の平和条約締結交渉のタイムリミットは、プーチン氏が内政に専念せざるを得なくなる2021年ごろになるだろう。
2018年1月、ニューヨークで行われたトランプ大統領に抗議する大規模なデモで掲げられた、ロシアのプーチン大統領にあやされるトランプ氏が描かれたプラカード(中央)(共同)
2018年1月、ニューヨークで行われたトランプ大統領に抗議する大規模なデモで掲げられた、ロシアのプーチン大統領にあやされるトランプ氏が描かれたプラカード(中央)(共同)
 前回2012年の大統領選挙では「2020年までのプーチン・プラン」と呼ばれる選挙綱領が存在したが、今回の選挙キャンペーンでは、プーチン氏が得意とする次期政権のストラテジー(戦略)は示されなかった。そのため、明確な政治ビジョンがなく、プーチン氏が惰性で権力にしがみついているような印象が強まっている。