より厳しい課題に直面するのがロシア外交である。2012年に首相から大統領に返り咲いたプーチン氏は、2014年3月にウクライナのクリミア半島を併合した。また、2015年9月にはシリアへ軍事介入するなど、対外強硬路線を極めながら国内で政権浮揚を図り、国際社会において身の丈以上の存在感を発揮することに成功した。

 ロシアが期待したトランプ政権との関係改善は実現していない。だが、米露関係の悪化が「欧米諸国に封じ込められるロシアにはプーチン氏のような強力な指導者が不可欠である」という選挙キャンペーンには役立った。

 それでも、ウクライナ危機以降、「欧米対中露」という二項対立的な図式に立って、プーチン氏が進めてきた「反米親中」路線を次期政権で貫くことには限界がある。プーチン氏が抱く世界観は、「米欧印中露」から成る多極世界が到来しつつあるというものである。その多極世界の一員たるべきロシアの影響力を、サイバー空間も含めた国際社会に拡大していくことが戦略課題である。最近、プーチン氏が、核戦力を含む軍事力の近代化に注力しているのもそのためである。

 国際戦略環境の重心が、それまでの欧米から中印などのアジア太平洋地域に移りつつあるとの認識から、プーチン氏は「ロシアの東方シフト」を進めている。米一極世界下では、ロシアは中国と連携しながら多極世界の構築を目指すという姿勢でよかったが、多極世界において米国から中国へ相対的なパワー・シフトが進む中、米中という二つの極の間でロシアがどのようなポジションを取るかが、次期プーチン政権にとって最大の戦略課題となるだろう。

 ロシアが真に影響力を発揮するためには、極端に悪化した米国との関係を改善し、極端に依存した中国との関係を立て直していく必要がある。ロシアがウクライナ危機により欧米諸国から敵視されつづけながら、突出した影響力を持つ中国のジュニア・パートナーに堕することを、プーチン氏自身は望んでいないと思われる。行き過ぎた「反米親中」路線を修正しようとするニュアンスは、プーチン氏が相対的に日本を重視しようとする姿勢からもうかがわれる。
2018年3月1日、モスクワで年次教書演説を行うプーチン・ロシア大統領(タス=共同)
2018年3月1日、モスクワで年次教書演説を行うプーチン・ロシア大統領(タス=共同)
 それでも、「ロシアゲート」に揺れるトランプ政権が対露関係改善の余地を有していないこと、プーチン氏の側も台頭する中国に対して明確な対抗戦略を持ち合わせていないことから、あと数年でレームダック化するプーチン氏が、現行の行き過ぎた「反米親中」路線を修正することもままならないであろう。プーチン氏が理想とする多極世界が到来しても、その中でロシアが埋没していく可能性が高いのである。