2015年9月の自民党総裁選で無投票再選し、「一強」の称号をほしいままにしていた安倍首相が打ち出したのが「ニッポン一億総活躍プラン」だった。その正体は、“年寄りを働かせて税金も保険料も納めさせるプラン”である。

 自民党・一億総活躍推進本部の「65歳以上のシニアの働き方・選択の自由度改革PT」は〈高齢者〉の基準を見直すべきとの提言をまとめた。

 そこでは、〈65歳までは「完全現役」、70歳までは「ほぼ現役」、65歳~74歳までは「シルバー世代」として、本人が希望する限りフルに働ける環境を国・地方・産業界挙げて整備し、「支え手」に回っていただける社会の構築を目指す〉と本音を隠そうともしない。

 問題は、“年寄りももっと働け”と煽り立てる一方、その労働環境整備が後回しになっていることだ。

 60歳以上で働く人の圧倒的多数は非正規雇用だ。中小企業では、「定年前とほとんど同じ仕事をしているのに、雇用形態は嘱託になり賃金は半減した」(都内に住む60代男性)といった批判が後を絶たない。
松山1億総活躍相(左から2人目)=2018年1月
松山1億総活躍相(左から2人目)=2018年1月
 本当に60歳以上の労働力を活用したいなら、年齢にかかわらず能力が給料に反映される「同一労働同一賃金」の導入が不可欠だが、その歩みは立ち後れている。

 昨年12月に政府が公表した「同一労働同一賃金ガイドライン(指針)案」では、正社員と定年後の再雇用者の仕事内容が同じ場合に賃金差を認めるのか否かについて、「検討を行う」とするだけで、肝心なところを曖昧にした。

 安倍政権はこの秋の臨時国会に、労働契約法改正案などの働き方改革関連法案を提出する予定だという。しかし改革が中途半端に終われば、“年寄りは現役時代から激減した賃金のまま働き続けろ”という状態で放り出されることを意味するのだ。

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