仲介する金融機関の担当者は、「交流会」に立ち会うことで、取引先の実情、課題や事業の将来性、可能性についてトップから直接に話を聞ける。新しい人材が加わったことで融資先の中小企業の業績が好転すれば、地域金融機関としてはのどから手が出るほどほしい新規融資の拡大にもつながる。「交流会」は中小企業、企業OB、地域金融機関をハッピーにさせる「一石三鳥」の効果がある。

 仕事を得た企業OBは、体調も考慮して週に2~3回マイペースで働けばよい。中小企業庁で予算がついていれば、最初の支援3回分は補助金が支払われる。企業側がこのOBの能力を評価し、OBとも意思が合致すれば、新たに雇用や業務委託契約関係を結んで「再就職」につながるケースもあり、企業OBはまさに「無尽蔵の人材の宝庫」(保田代表)と言える。

 中小企業に対する経営指導と言うと、中小企業診断士という国家資格者やコンサルタントがあり、それらのアドバイスを受けている中小企業は多い。だが、その多くは実際の実務経験のない座学に基づくものが多く、中小企業経営者からは「診断を受けても期待外れ」という声が聞かれる。「交流会」に参加する「新現役」の多くは、診断士の資格はなくても得意とする分野に関しては誰にも負けないほどの技量を持った人材が多い。

 東京都信用組合協会の八木秀男専務理事は「お金を貸すだけの地域金融機関から、中小企業を『育てる』金融機関への役割の変更が求められている時代の流れの中で、『交流会』は取引先のニーズに答えられるものだ。信用組合の職員も『交流会』で取引先企業のトップから経営課題を直接聞くことができて貴重な勉強の場になっている。これを是非とも定着させていきたい」と、高く評価する。9月21日には都内の主要な6信組と、60企業が参加する大規模な「交流会」の準備が進められており、その成果が注目される。

 東京都内に支店網を持っている大東京信用組合の品川支店は昨年11月に開催した「新現役交流会」へ、取引先であるスーパー「平野屋」を経営する堀江新三社長に参加を呼び掛けた。堀江社長はあまり気が進まなかったが渋々参加して、「新現役」8人と面談した。その中から三菱商事をリタイヤして小規模なスーパーの顧問をしている71歳の「新現役」に経営指導に来てもらうことにし、3回にわたりアドバイスを受けた。
大東京信用組合で行われたマッチングフェア
大東京信用組合で行われたマッチングフェア
 厳しく指摘されたのが、店内での部門同士のコミュニケーションが十分でないことだった。堀江社長は地元商店街の仕事などが忙しくて、店の経営を店長などに任せてきた結果、責任体制が明確になっていなかった。家族主義的な経営手法から、社長自らが社員に対してきちんと指示を出すべきだと直言された。堀江社長はこれまでコンサルタントなどに実務に基づかない指導が嫌いなため、部外者からアドバイスを受けなかった。しかし、近くにできた有力スーパーに客を奪われたこともあって、この数年間は売上が落ち込んでおり、「この減少を何とか食い止めなければと思っていたので、貴重な指導を受けて大いに参考になった。長年続けてきた家族主義的なやり方を急に変えるのは難しいが、指摘されたことを少しずつ実践しようと思う」とアクションを取ろうとしている。

 「交流会」に同席した大東京信用組合の菊島健二・品川支店長は「社長の話を通じて取引先の現場と中身を知ることができて、デスクワークだけでは分からない店の実態を理解できた」と話す。