しかし、タイプBにも大きな問題がある。問題とは、タイプBの高齢者がまさに「現役時代に培ったスキルを生かし、社会に貢献しようとして働く」ことだ。

 高齢者が「現役時代に培ったスキルを生かそう」とするとき、体力・気力の衰えから、自分で手足を動かすよりも、教育係、コンサルタント、相談役、社外取締役といった立場で働こうとする。私は15年前にコンサルタントとして独立開業し、そこそこ成功しているせいか、近年ほぼ毎月のように定年前後の中小企業診断士から「コンサルタントとして活動したいのだが、どうすれば良いか」という相談をいただく。コンサルタントや社外取締役は、スキル・経験を生かせる上、体力も軍資金も必要なく、タイプBが理想とする職業のようだ。

 コンサルタントや社外取締役として活躍するタイプBの本人は、充実した老後で大満足だろう。しかし、彼らから経験に基づく指導を受ける現役世代は大迷惑だ。高齢者が過去の成功体験を持ち出して「俺たちはこんな風に頑張って成功したんだ」と言っても、過去を否定して新しい挑戦をしなければならない現役世代には退屈な昔話である。自分が安全地帯に身を置いていることを忘れて「リスクを取って死ぬ気でやれ」と𠮟咤(しった)しても、今まさにリスクを取ってグローバル競争を戦っている現役世代の心には響かない。

(画像:istock)
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 さらに、高齢者が「社会に貢献しよう」と考えることも問題だ。すでに安定した生活基盤を持つBタイプが何とか仕事にありつきたいと願うと、常識ではありえないダンピング価格を提示する。私の知り合いの40歳代の研修講師は、ある企業の研修案件を「2日間40万円」でほぼ受注が決まりかけていたが、後から「3日間12万円」という安値を提示した60歳代後半の研修講師にさらわれた。コンサルティングや企業研修の世界では、この手の話をよく耳にする。

 高齢者のダンピングのおかげで、資金力の乏しい中小企業・零細企業でも気軽にコンサルティングや教育研修を利用できるのは、確かに社会貢献だ。しかし、30~50歳代の独立開業希望者からは、よく「報酬が安すぎて、独立しても食べていけそうにない」という不安を耳にする。教育・コンサルティングといったサービス分野では、高齢者が活躍するほど市場全体が低価格化して優秀な若手が市場参入を躊躇(ちゅうちょ)し、結果的に市場の発達が妨げられる。悪貨は良貨を駆逐するのである。