舛添要一(前東京都知事、元厚生労働相)

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改ざんで、前財務省理財局長、佐川宣寿(のぶひさ)氏の証人喚問が衆参両院で行われる。むろん焦点となるのは、公文書の改ざんがいつ、誰の指示で行われたのか、ということだ。

 そもそも一連の問題は、公文書の改ざんという事件性をはらんだ疑惑と国有地の森友学園への払い下げに不正があったかどうか、この二つの問題からなる。

 公文書の改ざんについては、前代未聞の不祥事であり、政権の立場を考えて財務省の役人が「忖度(そんたく)」して書き換えたものとされている。この問題は、大阪地検特捜部が任意で財務省の役人の聴取を行っている。つまり、これは捜査中の案件で、佐川氏が証言拒否することも可能であり、真相がどこまで明らかになるかは分からない。

 改ざん前の決裁文書を見ると、記述が詳細すぎて驚くが、そこには役人の魂胆が垣間見える。それは政治家案件であるために、事後に問題が起こったときには「自分(役人)の責任ではない、政治家の存在が無言の圧力となった」と逃げ道を作るためだったようである。

 このあまりに詳しすぎる決裁文書が近畿財務局、そして財務省本省で問題になるのが、昨年2月以降である。

 昨年の2月17日には、衆院予算委員会で、安倍首相が「私や妻が払い下げに関与していれば首相も国会議員も辞める」と答えている。また、2月24日には佐川氏が「学園との面会記録は破棄している」「国会議員らの不当な働きかけは一切なかった」と答弁。さらに、3月15日には「価格を提示したことも、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」と発言している。
「森友文書」書き換え問題をめぐる集中審議を実施され、疲れた様子で臨む安倍晋三首相(左)。右は麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月14日(共同)
「森友文書」書き換え問題をめぐる集中審議を実施され、疲れた様子で臨む安倍晋三首相(左)。右は麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月14日(共同)
 佐川氏は、まずは首相答弁と整合性を取るため、つまり首相辞任といった事態に陥らないように、国有地取引の内容を熟知しないまま、そのような答弁をしたと考えられる。

 そして、部下たちが理財局長の発言と矛盾するような文言を決裁文書から削除したと考えるのが最も事実に近いのではないだろうか。文書の改ざんが行われたのは、昨年2月下旬から4月にかけてである。

 野党は、役人が「安倍昭恵夫人」の名前を削除したのは、この首相答弁を忖度したからではないかと疑問を呈している。

 しかしながら、以上の経緯を見ても、役人レベルの決裁文書そのものについて、首相や首相夫人が知るわけがないし、まして改ざんするように圧力をかけることなど有り得ない。したがって、この公文書改ざんについて昭恵夫人を証人として国会招致するなどあってはならないことである。

 次に、国有地払い下げ問題については、特例での取引に不正があったのか、なかったのか、そしてそこに安倍首相や昭恵夫人、あるいは鴻池祥肇氏や平沼赳夫氏ら政治家の関与があったのかどうかが焦点になっている。