向谷匡史(ジャーナリスト)


 「佐川宣寿元長官が終わったら、次は昭恵夫人を引っ張り出せ!」と、野党の鼻息は荒い。自民党内においても、安倍一強で出る幕がないとあきらめていた連中が、総裁三選を阻止すべくモゾモゾと動き始めた。メディアも大張り切りで、昭恵夫人喚問の声はいまや大合唱の観がある。

 では、この大合唱の本質は何なのか。森友問題の経緯や事実関係、さらに公文書管理のあり方といったことについて、私は真相に迫れる立場にない。

 だが、森友問題そのものには、とても関心がある。交渉術や人間関係術に関するハウツー本の著書が多い私は、多角的な視点で事象を見る習慣があり、そうした視点から昭恵夫人の「証人喚問問題」を見ると実に興味深いのだ。

 世論に問いかける事件が起きると、私はまず愚妻の反応を見る。一国民の、いい歳をした専業主婦であることから、世間の受け止め方を代表しているように思うからだ。

 その愚妻が「昭恵夫人は喚問すべきよ」と、テレビのワイドショーを見ながら柳眉(りゅうび)を逆立てている。国民は怒っていると、私はハッキリ認識しつつ、「では、なぜ昭恵夫人を喚問しなければならないと考えているんだ?」と、素朴で根源的な質問をしてみた。
ケニアのナイロビに到着した安倍首相と昭恵夫人(右)=2016年8月
ケニアのナイロビに到着した安倍首相と昭恵夫人(右)=2016年8月
 愚妻は何を今さらといった顔で、憤然として言う。

 「昭恵夫人が籠池さん(森友学園前理事長)を贔屓(ひいき)したから、財務省は国有地を安く売ったんじゃないの。国会に呼んで問い質すべきよ」
 「なるほど。昭恵夫人が『安く売れ』と財務省に命じたわけだ」
 「いくらなんでも、そこまではしないんじゃない。忖度(そんたく)がどうとかテレビが言ってるから、官僚が気をまわしてやったんでしょう」
 「じゃ、昭恵夫人を国会に呼んで何を聞くんだろう」

 愚妻は一瞬、言葉に詰まったものの、「でも、総理夫人なのよ。その人が肩入れしているんだから、無言の圧力になるじゃないの」と、譲らないのだ。

 そこで、私はさらにこう問うてみた。

 「おまえが町内会長をやっていて、通りが暗いので外灯を設置して欲しいと、町内会の人に相談されたとする。どうする?」
 「必要なものなら市役所にお願いするわ」
 「当然だな。でも、設置してくれるかな?」
 「手続きやら審査やら、市の予算もあるから難しいかも」
 「どうする?」
 「地元の××市議に話してみる」
 「それって籠池被告の手法と同じだろ?」
 「……」

 そして外灯設置が問題化した場合、××市議が行政を恫喝(どうかつ)したとすれば即刻アウトとなるが、行政のほうで忖度したとすれば責任は誰にあるのか。

 「おまえ、経緯を知りたいから議会に証人として出てこいと言われたらどうする?」
 「いやよ。私は悪くないもの。だって、暗い通りに外灯は必要だと思ったから、そう言っただけよ」
 「昭恵夫人の場合は?」
 「……」

 こんな問答を愚妻と茶飲み話にするのだ。