高橋洋一(嘉悦大学教授)

 財務省による公文書書き換え問題はさまざまな方面に影響を及ぼしている。この問題の基本は、財務省による民主主義の根幹を揺るがず「犯罪」行為である。確かに、書き換えは公文書の削除なので、悪質な改ざんにはあたらないという法律意見はある。だが、元公務員の筆者からみれば、あってはならないことであり、「犯罪」にさえみえる。

 佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問では、誰が誰に指示したか、その理由を明らかにしてほしい。もっとも、佐川氏は捜査対象になっていることを理由として証言を拒むかもしれない。逆に、官邸に忖度(そんたく)したなどといって、矛先を財務省から首相官邸に向け、倒閣まで持っていくストーリーもありえる。

 いずれにしても、佐川氏本人が話さないと、この問題で国民はスッキリしない。もし国会の証人喚問でダメなら、国会での第三者委員会を作り、非公開で質問してもいい。佐川氏への告発は昨秋に受理されているので、捜査当局が逮捕してもいいはずだ。とにかく、事実が解明されることを望みたい。

 さて、本件を政治的にみれば、秋に予定されている自民党総裁選への影響が考えられる。あくまで財務省の問題なのだが、麻生太郎副総理兼財務大臣への政治的な責任も避けられない。となると、安倍晋三総裁(総理)の三選に黄信号がともる。

 文書書き換え問題が発覚する前、麻生氏と二階俊博幹事長を抑えている安倍氏の三選は揺るぎなかった。一方、対抗馬の岸田文雄政調会長は禅譲を期待し、石破茂元幹事長や野田聖子総務大臣は選挙人を集められることができるかどうか、という状況だった。しかし、ここにきて麻生氏の政治責任を追及されると、安倍氏もうかうかしていられない。
2018年3月26日、参院予算委に臨む安倍首相(左)と麻生財務相
2018年3月26日、参院予算委に臨む安倍首相(左)と麻生財務相
 先述の通り、財務省による公文書書き換え問題は、あくまで財務省という行政組織での不祥事である。しかし、政局に持っていきたい人たちは多い。一部の野党はもちろん、マスコミの一部も同調している。それに自民党内にもいる。そうした人たちは、森友問題での安倍昭恵首相夫人の関与と、麻生氏の政治責任を追及する。そして、財務省内の問題にとどまらせないように仕向けてくるのである。このため、佐川氏個人のミスには否定的で、少なくとも佐川氏が官邸に「忖度」したはずと主張する。