そして、佐川氏の国会証人喚問で、政局を期待する人たちは、佐川氏が捜査対象になっていることを理由として証言を拒むと、官邸の関与を隠すためだと批判するはずだ。逆に前川喜平・前文部科学事務次官のように政権に反旗を翻したり、「忖度」に言及したりすれば、一躍英雄扱いにするだろう。要するに、佐川氏の国会証人喚問で事実が明らかになるかどうかはどうでも良く、とにかく「安倍叩き」をしたい人たちなのだ。

 確かに、今の安倍首相の在任期間は2284日(3月27日現在)と長い。戦後の一人の宰相の平均在任期間は808日(2・2年)であるが、最長の佐藤栄作元首相の2798日、吉田茂元首相の2616日に次いで第3位である。

 しかし、近隣国を見ると、中国では憲法上の国家主席任期をあっさり撤廃し、習近平氏は「皇帝化」しようとしている。ロシアでも、プーチン氏は今回の大統領で4期20年にも事実上「皇帝」の座を確保しようとしている。北朝鮮にいたっては「終身独裁者」を戴いている。

 日本はこれらの国と違って民主主義国家であるとはいえ、財務省のごとき国内問題で足をすくわれるのは、隣国からみれば、格好のチャンスになり、日本の国益を大きく損なう結果になるだろう。特に、今の北朝鮮情勢を考えれば、つまらない国内問題で時間を使っている余裕はない。

 いずれにしても、政局がらみを期待する人が挙げるのが官邸や昭恵夫人への「忖度」である。だが、元財務キャリア官僚の筆者からみれば、政治家への「忖度」は他省庁とは違ってまずないといいたい。
財務省庁舎に掲げられている看板=2018年3月26日、東京・霞が関(桐原正道撮影)
財務省庁舎に掲げられている看板=2018年3月26日、東京・霞が関(桐原正道撮影)
 なぜなら、財務省には「予算編成権」「国税調査権」、そして「官邸内の人的ネットワーク」という、他省庁にない権限がある。これらのアメ、ムチ、情報を駆使しながら、政治家を手玉にとっていくことができる。他省庁とは事情が違い、「忖度」する必要がまずないのである。

 だから、もし佐川氏が証人喚問で、官邸への「忖度」を示唆したら、要注意である。もっとも、「忖度」は内面の話なので、佐川氏の個人的なものとして断定できないが、「忖度」を示唆することによって、世論の関心を財務省から官邸(安倍政権)に誘導していくことも可能だからだ。もちろん、官邸が「忖度」されたからといって、官邸の責任ではない。でも、世間の衆目を官邸に集めることができれば、政局にしたい人たちにとって非常に好都合なのである。