約1年前、筆者が運営している報道番組『ニューズオプエド』のライブ放送で、私自身、次のように語っている。
「首相夫人を国会に招致できれば野党の勝ち、呼べなかったら安倍官邸の勝ち。単純な構図の権力闘争だ」

 官邸がなぜ首相夫人を国会に呼ぶことをそこまで恐れるのか。その理由は案外難しくない。首相夫人の発言をコントロールできる人間が、夫人本人も含めて、この世に存在しない。ただそれだけにすぎない。

 首相夫人に罪の意識がないのは事実だ。最近も葛飾区議会議員の立花孝志氏のFacebookに「私こそ真実を知りたいのです。本当になにも知らないのです」とメッセージを寄せている。

 ある意味、彼女の他人事のような言動も理解できなくもない。というのも、この問題の根源は大阪府と大阪維新の会、さらには籠池氏による土地用地の取得というそれほど珍しくない陳情がきっかけになっているからだ。

 森友学園の用地買収に絡んで、最初に動いたのは鴻池祥肇事務所の秘書だった。次に鳩山邦夫事務所、平沼赳夫事務所のそれぞれの秘書が動く。安倍晋三事務所も本人ではなく、夫人が動いた。

 このように森友問題は、国会議員レベルではなく、地方自治体、もしくは秘書レベルの陳情に過ぎなかったのだ。

「森友文書」書き換え問題をめぐる集中審議を疲れた様子で臨む安倍晋三首相(左)。右は麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月14日
「森友文書」書き換え問題をめぐる集中審議を疲れた様子で臨む安倍晋三首相(左)。右は麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月14日
 それがここまで大きな問題になったのは巷間(こうかん)言われているように忖度(そんたく)の連鎖が原因だろう。

 近畿財務局が財務省本省に忖度し、財務省本省は会計検査院に、あるいは首相官邸に忖度し、自民党は内閣官房に忖度し、財務大臣や官房長官も首相に忖度し、その首相自身も夫人に忖度した。忖度が忖度を呼び、ついにはこうした結果に陥ったのだ。

 この騒動の中に国民の姿は見えない。見えるのは、そうしたスキャンダルの中、麻生太郎財務大臣と菅義偉官房長官の内部権力闘争だ。

 今年9月の自民党総裁選をにらんだ内部からのリーク合戦も加わり、安倍昭恵夫人の国会招致(証人喚問)というカードは、今や真相解明というよりも、激しい権力闘争の道具に使われているといえるだろう。