小林信也(作家、スポーツライター)

 元日馬富士による傷害事件以降、日本相撲協会との対立が続いていた貴乃花親方の「独り相撲」が終わった。弟子の十両、貴公俊が付け人を暴行した問題が発覚したことで、これまでの姿勢を一変させ、日本相撲協会の処分後には「弟子の育成と大相撲の発展のためにゼロからスタートしてまいります」という談話まで発表した。

 その真摯(しんし)な反省ぶりは当然とも言えるが、なかなかできることではない。とはいえ、貴乃花親方にとって愛弟子の暴行問題はまさに青天の霹靂(へきれき)であり、最もあってはならない出来事だった。この件については言い訳をせず、逃げ道も探さなかった。報道陣に向かって真っすぐ謝り、責任をすべて自分に向けた姿勢を世間はどう受け止めただろうか。

 貴公俊の暴行が発覚するまで、貴乃花親方と相撲協会の確執は一層深まり、春場所中には無断欠勤や奇行ぶりなど勤務態度がたびたび問題視され、協会だけでなくメディアからも厳しく非難された。頑(かたく)なに対決姿勢を貫いていたことを思えば、貴乃花親方の「軟化」は驚くべき変化である。

 貴公俊に最悪の処分が下ることを案じた親方なりの精一杯の思いとも理解できるが、これまで日本相撲協会に「角界改革」を突きつけて戦ってきただけに、心中を察するには余りある。

 ところが、これまでの報道をみる限り、メディアは貴乃花親方へのバッシングをどんどん強め、まるで「鬼の首を取った」かのような論調を展開した。貴乃花親方の謝罪で図に乗る親方衆、相撲評論家らの傍若無人(ぼうじゃくぶじん)ぶりは見るに堪えない。3月28日付スポーツ報知は、次のように報じている。

 日本相撲協会の役員以外の親方で構成される年寄会が28日に臨時年寄総会を開き、その後、貴乃花親方(45)=元横綱=へ「降格」以上の厳罰を求める意見書を執行部に提出する動きがあることが27日、分かった。年寄会は、春場所中に無断欠勤を重ね、8日目(18日)に弟子の十両・貴公俊(たかよしとし、20)の暴行が発覚するなどした同親方を問題視。臨時総会では降格のほか、「解雇」に相当する「契約解除」など厳しい処分を求める声が上がる見込み。

 一読して、疑問符ばかりが浮かぶ。あれだけ頑なだった態度を一変させ、誠心誠意謝罪に努める貴乃花親方に対して、ここまで言うのか。メディアも、どんな意図と根拠を持って、このような報道で煽(あお)るのか。
2018年3月、京都市内のホテルで行われた貴乃花部屋の千秋楽パーティーに出席し、報道陣の質問に耳を傾ける貴乃花親方
2018年3月、京都市内のホテルで行われた貴乃花部屋の千秋楽パーティーに出席し、報道陣の質問に耳を傾ける貴乃花親方
 このように人の心の機微が理解できない、人間関係の思いやりを持たない「イジメっ子」たちが、今の角界には溢(あふ)れている。このことが相撲界を揺るがす深刻な問題の温床だと、いみじくも露呈している。