貴公俊の暴行問題が起こる直前、日本相撲協会と貴乃花の関係は冷え切った状態だった。例えば、3月14日付スポーツ報知は次のように伝えている。

 春場所の欠勤を初日から続けている大相撲の貴乃花親方(45)=元横綱=に、出勤要請を出したことを14日、日本相撲協会の春日野広報部長(元関脇・栃乃和歌)が明かした。
 協会によると、2日目の12日に貴乃花親方から連絡が入り、元横綱・日馬富士関の暴行事件で被害者となった弟子の貴ノ岩に関して、医師と連絡を取る必要があり、役員待遇委員として役員室に常時滞在することは極めて難しい旨が伝えられたという。だがその主張を「出勤しない理由にはならない」と協会側は同親方に連絡。3日目の13日夜に再度、協会への返答があったが「体育館(エディオンアリーナ大阪)で柔軟に対応する」という趣旨で、役員室へ常駐する意思は示されていなかったという。
 これを受けて協会側は欠勤を認められないと判断。「今後出勤するように理事長名で指示します」(春日野部長)とした。また貴乃花親方とは12日の段階から電話がつながらず、FAXでの文書のやり取りで連絡をとっているという。同親方は1月に初の理事解任処分となった際に、協会からの電話に出ることも求められていた。


 貴乃花親方が春場所直前、内閣府に「告発状」を提出したことも、協会が態度を硬化させた背景にある。3月18日付デイリースポーツによれば、

 職務放棄が問題となっている貴乃花親方(45)=元横綱=が17日、役員室に3日連続で入り、最短25秒で退室し、会場を後にした。15日は数分、16日は1分未満の役員室滞在だったが“記録”を更新。3日連続の“超速早退”に協会側はついに最後通告となる文書を突き付けた。


 女子レスリングのパワハラ騒動に関して、筆者は「両者を公平に扱ってはいけない」と指摘した。「パワハラを受けた」と感じている側の言い分をまず存分に聞くべきであって、パワハラをしていると告発された側は一方的に否定したり、被害者の気持ちを踏みにじる言動、行動があってはならない。ところが、貴乃花親方の場合、親方の訴えは全く受け入れられることなく、全否定され、むしろ断罪され続けていたのである。

2018年3月、日本相撲協会の危機管理委による
事情聴取を終え、会場のホテルを出る
貴公俊関(左)。右は貴乃花親方
 貴乃花親方をめぐる一連の騒動を「日本相撲協会」対「貴乃花」の正義をかけた戦い、次の理事長選も見据えた「勢力争い」のように見る向きが多かった。それだけ貴乃花親方は孤高の存在感であり、横綱としての実績も大きかった。世間もメディアも、いや筆者自身も勘違いしていたが、実は一連の騒動が「日本相撲協会による貴乃花へのパワハラだったのではないか?」と今は思っている。

 「貴乃花親方は立場ある人間だからパワハラとは言えない」「協会の人間として大相撲の発展に努めるのは当然」という声も聞こえてきそうだが、貴公俊の暴行問題が起きるまでの貴乃花親方の表情や心理状態を察すると、まさに孤立無権であり、組織の権力によってどんどん追い込まれ、自らの主張を一切封じられた状況ではなかったか。そして、ついには理事という立場まで奪われたのである。まさに日本相撲協会による「パワハラの構図」だったと言えないだろうか。