片山修(経済ジャーナリスト、経営評論家)

 「物流危機」は昨年、ヤマト運輸の労働組合が荷受量の抑制を訴えたのを機に一気に浮上した。危機は、いまや宅配業者だけでなく、日本郵便や引っ越し業者にまで波及、拡大している。宅配業者は宅配ドライバー不足が決定的なうえ、宅配時の不在問題もあって、長時間労働が常態化するなど疲弊が深刻だ。このままでは宅配ビジネスが成り立たないという苦境の中で、業者は一斉値上げに踏み切った。

 例えば、ヤマト運輸は、個人向け宅配料金の値上げに加え、法人向けの値上げを交渉した結果、6割の大口顧客が値上げに応じた。平均値上げ幅は15%以上に及んだ。宅配便急増の最大要因といわれたアマゾンも4割超の値上げを受け入れたとされる。日本郵便も3月、宅配便「ゆうパック」の個人向け料金を平均12%引き上げた。

 その余波というべきか、宅配業者の宅配ドライバーの労働条件や賃金改善に伴って、一部の引っ越し業者のドライバーが宅配業者に移籍した。その結果、引っ越し業者は人手不足に拍車がかかったといわれている。なにしろ、3~4月の異動期は年間引っ越し件数の約3割が集中する。ドライバーや作業員不足から、希望時期に引っ越しがかなわない「引っ越し難民」続出が懸念されているのだ。

 その対策の一環として、日本通運やヤマトホールディングスなど引っ越し大手は、単身者向け引っ越し料金の値上げに踏み切った。それとともにアルバイトの人件費をアップする計画だ。でないと人手が集まらないからだ。

 しかし、いくら宅配業者や引っ越し業者が値上げなど対策に乗り出しても、物流危機の抜本的な問題解決にはつながらない。というのは、今後もEC(電子商取引)市場の拡大は確実なことに加え、引っ越し時期の分散には限界がある。加えて、人口減少社会のなかでドライバー不足はますます深刻化する。果たして、問題解決の糸口はあるのだろうか。

 求められるのは最先端技術を使った新時代型物流網の構築だ。スマート物流の実現である。つまり、衛星利用測位システム(GPS)やインターネット、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ、人工知能(AI)など、最先端技術を活用した物流革命の推進である。物流危機の解消はこれしかない。
2018年3月、東京都目黒区にあるアマゾンジャパン本社が入るビル(奥)
2018年3月、東京都目黒区にあるアマゾンジャパン本社が入るビル(奥)
 具体例を見てみよう。例えば、ドローン(小型無人機)や無人運転車の利用によって配送の無人化が模索されている。日本郵便は2016年からドローンを使った郵便物輸送の実証実験に取り組んでいる。今年3月には都心公道において、将来の無人走行を想定して自動運転車による輸送の実証実験を行った。

 ヤマト運輸はDeNAと組み、自動運転の実用化に向けて、神奈川県で「ロボネコヤマト」プロジェクトの実証実験を行っている。顧客が場所と時間を指定すると、自動運転車で配送する仕組みだ。現在はドライバーが乗車するが、将来的には自動運転を取り入れるという。また、国土交通省は18年度中に高速道路の長距離輸送の効率化を目指し、後続隊列無人走行の実証実験を開始する予定だ。