物流業者だけでなく、荷主側のアマゾンなどの通販業者も知恵を絞っている。サイバー空間で、いくら大量の注文を受け付けても、モノを届けられなければ事業は成立しない。アマゾンやヨドバシカメラなど、EC事業者は自社配送網構築に取り組んでいる。現に、アマゾンは、米国などでドローンによる配達の実証実験を行うなど、自社配送網の構築に余念がない。楽天もこの1月、2年以内に自社配送網を構築する方針を明らかにした。

 その点、オフィス用品通販大手のアスクルは、すでに配送全体の約6割を自前配送網で賄っている。「業界でもっとも物流システムが進んでいるのは、間違いなくわが社だと思います」と、アスクルの岩田彰一郎社長は自負する。効率的な配送網のカギはAIだ。

 例えば、アスクルの個人向け通販「ロハコ」では、「ハッピーオンタイム」というサービスを提供中だが、AIを活用して、消費者が1時間ごとに配送時間を指定できるシステムを構築しているのである。通常、配送業者のドライバーは、決められた担当地域の地図を記憶し、荷札と比較して効率的な荷物の積み込み順や配送ルートを考える。しかし、「ハッピーオンタイム」では、システムが配送ルートと時間を計算し、消費者の希望する時間をさらに30分間に絞り込んでメールで伝える。

 到着時間は、システム上では秒単位で予測されており、前後15分の余裕をもって消費者に知らせる仕組みだ。コンピューターによるルート設定やAIによる予定と実績の差分分析を行い、到着時間の予測精度は従来比25%改善。通常約2割といわれる不在率を約2%に抑えている。

 同社は、ドライバーの動きをリストセンサーで分析し、研究に生かす取り組みも行っている。ベテランと新人では、ドライバーの動きは大きく異なる。配送車を停めてから荷物を届けるまでに時間がかかる場合もある。配送ルートの気象情報、従業員の経験、荷物の重量、配送地域など、すべてをデータとして取り込み、AIで分析する。今後、BtoB(企業間取引)にも応用する考えだ。

 さらに、物流センターでは、EC世界初となるピッキングロボットをはじめ、多くのロボットを導入している。最終的には、荷物を持ち上げてトラックの中に運び、積み込みまで行うロボットを視野に入れる。「いろんなロボットを検討している段階なんです。われわれの最終的な目的は、AIやロボットを物流センターや配送網に実装して、お客さま価値を上げることです」と、岩田氏はいう。
ニトリのグループ会社「ホームロジスティクス」が運営する西日本通販発送センター。倉庫内を無人搬送ロボット「バトラー」が走り回る=2017年12月(沢野貴信撮影)
ニトリのグループ会社「ホームロジスティクス」が運営する西日本通販発送センター。倉庫内を無人搬送ロボット「バトラー」が走り回る=2017年12月(沢野貴信撮影)
「危機こそチャンス」とは、よくいわれることだが、物流危機は従来式のアナログな物流を、最先端技術を活用したスマート物流へと進化させる大きなチャンスと見るべきだろう。引っ越し業界でも、引っ越し需要の予測精度向上に、AIのアルゴリズムを活用するなど、最先端技術を活用した業務改善の動きがある。

 今後、スマート物流網が急速に進んでいくのは間違いない。近い将来、AIの活用が業界の競争力を左右することになるだろう。