韓国カジノ管理委員会などの依存症調査(「ギャンブル産業利用実態調査」)では、中リスク以上を依存症者と位置付けている。政府案の1カ月10回以内では年間120日のカジノ入場を許容することになり、これでは依存症の抑制策たり得ない。

 シンガポールでは、2010年のカジノ開業前の2009年に自己申請・家族申請・自動排除などでカジノ入場禁止を行う「自己排除制度」が導入されていたが、2013年6月から新たに自己申請・家族申請・第三者申請による入場回数制限(1月あたり1回、2回、4回、6回、8回の選択制)が導入された。

 この回数制限で注目されるのは、シンガポールの国立問題ギャンブル評議会(NCPG)が、カジノへの頻繁な入場者をリストアップし、その家計状況(銀行口座、クレジットカード利用状況など)を審査し、ギャンブルによって家計的困難が生じている場合は、個人的状況に応じた回数制限を強制的に課す第三者申請の回数制限措置である。

 表1に見るように、昨年末の回数制限適用者5598人中、第三者回数制限者は3715人(66・4%)となっている。審査対象者らの詳細は2016年から非公表となっているが、2015年末には4532人が「頻繁なカジノ入場者」として審査対象となり、そのうち2012人(44・4%)に回数制限が適用されている。
資料:NCPG「Active Casino Exclusions & Visit Limits 」
資料:NCPG「Active Casino Exclusions & Visit Limits 」
 NCPGの依存症調査によると、2011~14年にかけて依存症率が大きく減少している(表2参照)。それぞれの調査期間は3月~8月であり、14年時のデータは回数制限導入後1年余りでしかなく、回数制限がどの程度の効果があったのかは十分な判断はできない。

 しかし、同調査では、週1回以上のギャンブル経験者が常習者とされ、依存症者(病的)の83%が常習者とされるので回数制限の有効性は推測できる。だが、ここで重視されるべき点は、この回数制限は単なる回数制限にとどまるものではなく、過度の常習者に対する家計調査やカウンセリングを行った上でより厳しい回数制限を課す制度が中心であるということである。
資料:NCPG「Report of Survey on Participation in Gambling Activities 
    among Singapore Residents」2009、12、15年版
資料:NCPG「Report of Survey on Participation in Gambling Activities     among Singapore Residents」2009、12、15年版 

 深刻な場合は、回数制限にとどまらず、入場禁止措置も取られることになっているが、日本においても単なる回数制限で終わるのではなく、家計状況調査などを踏まえた第三者申請による回数制限や入場禁止措置と一体となったものでなければ有効性は担保できないと言える。しかし、市民と永住権取得の成人人口310万人を対象としたシンガポールの入場回数制限制度を日本において有効に実施することは極めて困難と言わざるを得ない。

 ところでラスベガス観光局の調査では、初訪問者のカジノ目的比率は1%であるが、平均3泊4日の滞在期間で73%がカジノでギャンブルを体験している。その結果、再訪問者のカジノ目的比率は12%と大きく増大している(Las Vegas Visitor Profile Study 2015)。偶然性に対する賭けであるカジノのギャンブルは多くの人に勝った経験を味わいさせることでリピーターにしていくビジネスモデルであるので、最大の依存症防止策はギャンブルを経験させないことに尽きる。

 その点でカジノ入場禁止を課す「自己排除制度」が回数制限以上に有効な対策となるが、政府案では事業者に本人・家族申告による利用制限措置などの実施を義務付けさせるべきと述べるにとどまっている。

 多くの国で依存症対策の一つとして自己排除制度が活用されている。例えば米国では、カジノ合法化24州中20州でなんらかの自己排除制度が導入されているが、有効に機能しているとは言えない。多くは氏名、住所、写真などを記載したリスト作成に基づき入場を制限する形式だ。だが、事業者に運営が委ねられた場合は依存症の危険性の啓蒙活動や制度の存在の宣伝がおろそかになるため、申請数が少ない上に、登録した場合でも入場時の確認が不十分なため機能しないとされる。