さらに、入場料金額の多寡に関してだが、これを論ずるにあたっては国内で同様に入場料の徴収が行われている類似のギャンブル産業と比較してみる必要もあるだろう。現在の依存対策論議では、カジノの入場料設定だけが論議の焦点として取り挙げられがちであるが、実はわが国の公営競技場はそれぞれの論拠法に基づいて、カジノ施設と同様に入場料の徴収が行われている。

第五条 日本中央競馬会は、競馬を開催するときは、入場者(第二十九条各号に規定する者その他の者であつて農林水産省令で定めるものを除く。)から農林水産省令で定める額以上の入場料を徴収しなければならない。ただし、競馬場内の秩序の維持に支障を及ぼすおそれがないものとして農林水産大臣の承認を受けた場合は、この限りでない。

 この競馬法と同様の規定は、わが国のボートレースを規制するモーターボート競走法にも存在する。一方で競輪やオートレースを規制する自転車競技法や小型自動車競走法では2007年の法改正によって「規制緩和」という名目で同様の入場料規制が撤廃されている。結果として現在、各公営競技及びパチンコ産業など、カジノと類似するサービスを提供している施設への入場料設定は以下のようになっている。
【注】ただし、公営競技の場外投票券売場に関して入場料はない(筆者作成)
【注】ただし、公営競技の場外投票券売場に関して入場料はない(筆者作成)
 このように見ると、現在わが国のカジノで導入されることが提案されている6千円の入場料設定は、国内の類似するギャンブル産業と比べて相当以上に「高額」な設定であることが分かる。

 また、カジノ入場料の金額設定に基づく日本人顧客の消費意向の変化も非常に興味深い。以下は昨年9月にヤフー・ジャパンによって実施された「カジノ入場料、いくらまでなら行ってみたい?」という意識調査の結果である。この質問に対して、500円程度の入場料では100%が「行く」と答えたのに対して、当初政府が提案していた2千円程度の入場料の場合でも、カジノ訪問意向が半分(49・1%)程度にまで下がることが分かった。
出典:「IR実施に向けた制度・対策に関する検討PT資料」(内閣官房)
出典:「IR実施に向けた制度・対策に関する検討PT資料」(内閣官房)
 このヤフーによる意識調査では「いくらの入場料を課すと、どの程度の需要が抑制されるか」に焦点が集まりがちだが、実は最も注視すべきなのは、カジノ入場料が「いくらでも行く」と答えた7・3%の層である。むろん、この層の中には文字通りカジノ入場料がいくらであっても構わない超高所得者層が含まれている可能性もある。しかし、一般的にインターネット上で行われるこの種の簡易調査における超高所得者層の出現率というのは限りなくゼロに近い。

 すなわち、この設問で入場料が「いくらでも行く」と答えた7・3%の人たちは「入場料がいくらであったとしてもギャンブルでその分勝てばよい」と考えている層、もしくは「自身の所得水準とそれに対する適正支出水準を念頭に置かずして入場料が『いくらでも行く』と答えた」層である可能性が高い。いずれにせよ、カジノ入場に対して適正な判断能力に欠けた解答を行っている層であると考えられる。

 本来、依存対策というのは、このようなカジノ利用に際し、適正な判断能力に欠けてしまっている層に対する効果のある施策でなければならない。だが、この種の人たちに対しては入場料の設定が効果的に働かないことはこの意識調査の結果からも見て取れる。