では、ギャンブル上の問題を抱える人たちに対して、どのように対処を行うべきか。その答えが、政府が入場料と併せてもう一つの施策として提示している「入場回数の上限措置」である。

 「依存」とはそもそも、自らの理性的な判断によってはとどめられない衝動的な欲求に基づいて特定の物事に対し過度に執着してしまうという精神障害である。ギャンブル依存の場合、そのほとんどの場合がゲームへの参加頻度の上昇としてその症状が現れる。そこに制限をかけようというのが、今回の政府による施策案である。

 実は、この「入場料設定よりも入場回数規制」という依存対策の方針は、入場料の賦課を重要視する論調が強かったわが国のカジノ業界にあって、それに異を唱える少数派の研究者として私自身が長年主張してきたものだ。そして今回、政府が依存対策としてこの入場回数の上限措置を前面に打ち出したのは、そのような一連の論議背景があってのことである。

 そもそも、わが国のカジノ合法化はあくまで「観光振興」の一環として、例外的にカジノを含む統合型リゾートの設置を認めるものである。国民に対して、それを「日常の娯楽」として利用することを推奨するものではない。

 そこで、今回提案されたのが「観光施設」としての利用にふさわしい利用回数を制度上定め、日本国民、もしくは在留外国人のそれ以上の利用を制限するという措置だった。制限措置の具体的な数値として出てきたのが、先般自民、公明両党で合意した「週3回、月10日以内」という入場制限である。

 ただし、現在政府側から示されている制度案を見る限り、政府はこの入場回数規制をどのように依存対策として「有効に機能させるか」に関して、いまだ正しい理解をしていないように想える。そもそも、この入場制限は、制度そのものだけでは依存症対策に「ならない」。たとえ入場回数の制限があったとしても、ギャンブル依存者はその限られた入場回数の中で目いっぱいのギャンブルを行い、その内容をエスカレートさせていくからである。

セガサミーHDと韓国パラダイスグループが
共同開発した韓国初のIR施設
「パラダイスシティ」に開業した
外国人専用カジノ=2017年04月、韓国・仁川
 では、どのようにこの上限措置を有効に機能させるのか。そのヒントは韓国のカジノ産業にある。韓国は、世界のカジノを合法とする主要な国の中にあって、自国民に対する入場回数制限を設定する代表的な国である。

 韓国の入場回数上限は月あたり最大15日と、日本が計画している制限措置よりも緩慢である。だが、一定期間のうちにこの上限回数に繰り返し到達するような利用客に対しては、その人物が依存状態に「ある・なし」を問わず、強制的に専門家によるカウンセリングを受けさせる(受けなければ再入場できない)という施策を取っている。

 すなわち、多くの依存者にとって共通して現れる「ゲームへの参加頻度の上昇」という現象を基準として、該当する人の中から依存リスクの高い人を抽出し、ギャンブル依存の早期発見、早期対処につなげていく。このような仕組みが韓国の入場回数規制の背後に存在している。それを日本政府が表層的にマネるだけでは、実効性のある依存対策にならないのである。

 残念ながら現在、日本政府が示している制度案の中には、依存者を早期発見して次への対処につなげていくために、韓国のような具体的な施策部分が欠けている。つまり、依存対策としての施設入場回数制限は「不完全な提案」にしかなっていないといえる。政府には今の施策案で不足している部分を、新たな制度提案によって早急に補完し、より意味のある依存対策の構築に向けて動くことが求められている。