また、パチンコを含め公営ギャンブルでも盛んに「依存症対策の相談窓口を作る」「電話相談を受ける」など、最も対策をやりやすく、産業側の売り上げダメージの少ないものを作り、対策推進をアピールしているが、このような窓口はすでに精神保健センターや保健所、または当会のような民間団体など、既にさまざまな拠点で行われており、効果のほどは限定的になると言わざるを得ない。

 では、カジノの依存症対策はどのようなものが挙がっているのか。これが実に不可解な対策で、「カジノの入場料を6千円にする」「カジノへのアクセス制限として週3回まで、月10日以内とする」というものなのである。

 よく考えてほしい。週末2回しか行われていないJRAですら依存症は大きな問題となっているのである。我々の所には「競馬の借金のために会社のお金を横領した」「不動産を担保に入れてまで、競馬で借金をしてしまった」といった相談は決して珍しくないのである。

 それなのに、週3回に限定することにどんな意味があると政府は考えているのだろうか。また、「カジノに来て数万円から数千万円の遊びをしよう」という人に、入場料を6千円程度取ったからといって、抑止力になるのか、甚だ疑問である。

 その上、「カジノが国内に何カ所作られるのか?」といった重要なポイントはいまだ明確にされていない。エビデンスもない依存症対策を、華々しく打ち上げ、いかにも依存症対策を厳格にやっているかのように見せるイメージ戦略に、我々としては誤魔化されたくないと思っている。

 では、求められる依存症対策とはどのようなものか。そもそもギャンブル依存症は特効薬があるわけでも、「これだ!」という治療法が確立されているわけでもない。2014年にIR法案が初めて衆議院に提出されるまでは、ギャンブル依存症対策は議論の対象にすらならず、もちろん国や地方自治体、医療機関などでもほとんど対策はなかった。そのため、日本ではギャンブル依存症の当事者と家族が中心になって対策を行ってきた経緯がある。
(画像:istock)
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 今からおよそ30年前の1989年に、ギャンブル依存症当事者の自助グループ「GA」が生まれ、その2年後1991年にはギャンブル依存症者の家族の自助グループ「ギャマノン」が誕生した。そこから当事者や家族が支え合い助け合う形で、きめ細かい支援を行い、わずかに理解のある医療従事者とともにさまざまな困難事例を解決してきた。

 つまり、自助グループはIRの議論とともに、にわかに誕生した専門家と名乗る医療従事者や研究者、そして行政よりもはるかに多くの事例を持つ、ビッグデータの役割を果たしているのである。だからこそ、この当事者や家族の知識や経験を生かし、ギャンブル依存症対策はネットワークを作る形で、網目状に作られていくべきなのである。

 例えば、家庭内で暴言・暴力、脅しなどで毎日のように金銭を要求し、断れば暴れることを繰り返しているような依存症者に対しては、「介入」が必要であり、警察や精神保健センター、保健所や医療が連携し、入院や回復施設への入寮へと促すべきである。