太田房江(参院議員)

 京都府舞鶴市で4月4日に行われた大相撲春巡業の際に起きた、土俵の「女人禁制」問題は今も尾を引き、日々ワイドショーで取り上げられている。これは、私が大阪府知事に就任した2000年から8年間、「大阪場所での府知事賞は自分の手で優勝力士に渡したい」と発言したことが発端になっている。また現在、私が自民党女性局長を務めている立場から、この問題について改めて再考したい。

 今回の問題は、舞鶴市の多々見良三市長が土俵上で倒れ、観客と思われる女性数人が心臓マッサージなどを施し、必死の救命措置が行われている最中に起きた。その際、繰り返し流れた「女性の方は土俵から降りて下さい」という場内放送が不適切であったことは、直後に日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)が謝罪した通りであり、この相撲協会の対応は的確だったと評価している。「人命」と「伝統」とでは、「人命」が重いことに疑う余地はない。

 私は、この件に関するマスコミの取材には「勇気を持って土俵に上がり、『降りて下さい』のアナウンスが何度も流れる中で、必死に人命救助に当たられた女性を、同じ女性として誇りに思い、拍手を送る」と答えた。これは正直な感想である。

 ただ、表彰などで女性が土俵に上がって良いかどうかは、こうした緊急時の対応とは別に熟考すべき問題である。大阪府知事として8年間、8回にわたって、相撲協会に「今回はいかがでしょうか」と問いかけを行ったのも、「日本の伝統」と「女性活躍」という社会の変化について、多くの方に考えていただく契機にしてもらいたいと思ったからであり、どうしても土俵に上がりたかったという訳ではない。

 横綱審議委員も務め、東北大学大学院で大相撲の研究をした脚本家の内館牧子氏によれば、「土俵は聖域」であり、そこが「女人禁制」であることを理解する知性と品性が必要、と述べている。もともとは、中国において仏教徒の修行の場を囲み、修行僧の心を乱す障害物が入らないように「区切った」ことが始まり、とも説明していた。女人禁制の寺院が、日本で今も残っているのは、その流れだろうか。
大阪場所で優勝した貴闘力関に楯を贈呈する太田房江・大阪府知事(当時)= 2001年2月28日
大阪場所で優勝した貴闘力関に楯を贈呈する太田房江・大阪府知事(当時)= 2001年2月28日 
 この他にも、昔は炭鉱で石炭を掘るための坑道や、石油を採取する海上のリグ(掘削装置)などにも女性は立ち入りできなかった。私は旧通産省(経済産業省)の出身だが、1986年、初の女性局長として札幌通商産業局長となった先輩の坂本春生(はるみ)氏が、その伝統を変えて仕事のために坑道に入った時には、心の中で拍手を送ったものだ。

 このように、「男性が命を懸けて戦う」、あるいは「男性が集中力を絶やしてはいけない区域」には、女性が入ることができない歴史は、様々な分野に存在してきた。これらを前提に、女性が表彰のために土俵に上がることを、女性総理が近い将来誕生するかもしれない現代にどう考えるべきか。