上祐史浩(「ひかりの輪」代表)


 まず、一連のオウム事件の被害者、遺族の方々に、当時の教団の活動に重大な責任を有した者の一人として、改めて深くお詫び申し上げたいと思います。これを踏まえた上で、今回依頼されたテーマである麻原彰晃(本名、松本智津夫)の死刑執行などについて論じたいと思います。
地下鉄サリン事件から23年となり、東京メトロ霞ケ関駅で献花し手を合わせる遺族の高橋シズヱさん=2018年3月、東京都千代田区(代表撮影)
地下鉄サリン事件から23年となり、東京メトロ霞ケ関駅で献花し手を合わせる遺族の高橋シズヱさん=2018年3月、東京都千代田区(代表撮影)
 ご存じの通り、麻原の死刑執行が近いとされています。そして、ようやくその時が来たというのが今の私の率直な心境です。

 1997年前後、麻原は自分のハルマゲドン予言が外れ、心身に変調をきたし、裁判で不規則発言を始めました。その頃から、私は以前のように、麻原を絶対視することに、徐々に無理を感じるようになりました。その後、悪戦苦闘しつつも、麻原信仰から脱却し、その10年後の2007年に、アレフ(現Aleph・旧オウム真理教)を脱会し、「ひかりの輪」を設立しました。

 私が脱会する前のアレフは、当時代表だった私に賛同する者と、麻原の家族(麻原の妻、三女、次女ら)に賛同する者(主流派)に分裂しました。その中で、私たちは、麻原の絶対性を否定し排除している「グル外し」と激しく非難され、教団活動からも排除され、そして幽閉されました。彼らの言う「グル外し」の最たる理由は、私たちが麻原の事件への関与を認めた上に、麻原の刑死を前提とした話をしたという事が含まれていたのです。

 その後も主流派は「グル(麻原)の死を前提にした話をするなどとんでもない」と激しく非難を続けました。彼らの主張は「教団は事件に関与していない」という陰謀説や、「最終解脱者のグルが事件をなしたとすれば、それを総括・否定できない」、さらには「グルが(刑死を含めて)死ぬのは弟子がグルを求めないから(帰依しないから)」といったものでした。すなわち、麻原の死自体が、アレフでは「タブー」だったのです。

 この背景には、麻原が変調を来す前に、獄中から改めて予言を説き、自分は不死の身体(陽身)を作るといったメッセージを出して、麻原の予言の成就・復活を期待させるような言動をしていたことがあります。麻原は刑死さえしない「不死の救世主」という主張です。

 こうした状況の中で、2006年9月に麻原の裁判が終結し、アレフでは現実的かつ合理的、合法的な活動はできないという考えを私たちは強くしました。それが、翌2007年に脱会し新団体「ひかりの輪」を設立して、麻原への依存から脱却する枠組みを作る理由の一つとなりました。

 そして、あれから10年以上経った今年、麻原の死刑執行の本格的な検討が始まりました。私たちが10年以上前から考え続け、試行錯誤しながら行動したことがようやく今、現実的な意味を持つようになりました。

 もちろん、一連の事件後、麻原の死刑執行を望まれてきた被害者、遺族の方々のお気持ちとは比べものになるものではありません。ただ、この間、自分を取り巻く状況が目まぐるしく変わり、麻原の死刑執行について「ようやくだな」というのが率直な思いです。

 では、麻原の死刑が執行された場合、アレフはどんな反応を示すのでしょうか。よく一般の方にイエス・キリストが処刑された後に復活し、救世主として神格化されたように、アレフにおいても麻原が死刑によって神格化されることはないのか、と聞かれることがあります。

 私はそうした心配はないと思います。なぜかというと、既に「神格化」されているからです。アレフは麻原から物理的に離れて久しく、いつでもどこでも麻原は自らの「超能力」で信者を見守っており、例えばアレフの道場にも、麻原は存在すると説いているそうです。