山田順(ジャーナリスト)

 17日から18日(米東部時間)にかけて行われる日米首脳会談で、安倍晋三首相は、トランプ米大統領と「じっくり話し合う」意向だと伝えられている。いまだにあるのかどうか判然としない「米朝首脳会談」、トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長との激突をにらんでの日米同盟のあり方が最大の議題となる。そして、先日発動された「鉄鋼・アルミ関税」の適用除外も議題となるだろう。そこで本稿では、鉄鋼・アルミ関税問題を中心に考察を試みてみたい。

 まず、述べておきたいのは、トランプ氏という人物が、人の話をまず聞かない、とんでもない大統領だということ。つまり、首脳会談などと言っても、何が飛び出してくるか分からないのだ。外交常識から言えば、首脳同士が会うのだから、その前に行われる実務交渉や高官協議で大概の話は終わっている。ところが、トランプ政権というのは、この常識が通用しない。

 トランプというのは、アメリカ合衆国の歴史に登場したことのない「偉大なる大統領」であり、自分を「(情緒が)すごく安定した天才(a very stable genius)」と思っている男である。しかも、ポルノ女優、ストーミー・ダニエルズと一夜限りの関係を結び、それを口外しないように13万ドルを支払ったという老人である。とてもじゃないが、何を言っても説得などできないだろう。

 米中西部の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の街で、朝からダイナーでクアーズのビールを飲み、ステーキをたいらげるプア・ホワイト(白人貧困層)のために「制裁関税(sanction tariff)」を思いつく「錆びついたアタマ」の持ち主に、今さら自由貿易の大切さを熱弁しても、聞く耳を持たないだろう。菅義偉(よしひで)官房長官は「(日本側から)自由貿易の大切さを十分に申し上げることになる」という見通しを述べたことがあるが、そんなことをまともに言ったら、この老人の機嫌を害すだけである。

 ここから順次説明していきたいが、この大統領には、論理的な説得は一切通用しない。例えば、「大統領閣下、クオリティーの高いわが国の高規格鉄鋼の値段が上がると困るのは貴国の方ではないですか。自動車の販売価格の上昇を招きます」などと言っても、この人は何のことか分からないだろう。毎朝、オーバルオフィス(大統領執務室)に届けられるレクチャーペーパーの枚数が多いと、即座に怒り出すという「天才老人」なのだから。
2017年2月、米フロリダ州でゴルフを楽しみ、ハイタッチする安倍晋三首相(左端)とトランプ米大統領(内閣広報室提供)
2017年2月、米フロリダ州でゴルフを楽しみ、ハイタッチする安倍晋三首相(左端)とトランプ米大統領(内閣広報室提供)
 それでは、トランプタワーに真っ先に駆けつけ、ゴルフを2回もやった「仲の良さ」で、何とかお願いすればいいのだろうか。これもまた違うだろう。なにしろ、この「天才老人」は筋金入りの「白人至上主義者」で「レイシスト」だ。チャイニーズもジャパニーズも、彼にとっては同じだからである。

 それに、トランプ氏には安倍首相より仲のいいゴルフ・フレンドが山ほどいる。フロリダ州パームビーチの金ピカ別荘「マールアラーゴ」の近所には、あのグレッグ・ノーマンも豪邸を構えており、トランプ氏とは「ご近所ゴルフ付き合い」をしている。そのため、トランプ氏はノーマンの頼みにイヤとはいえず、オーストラリアが関税適用除外になったと言われている。