また、ICBM発射実験中止は、アメリカにとってはグッドニュースで、トランプ大統領は評価しているようだが、北朝鮮は実験を中止すると言っただけで「開発」を中止するとも言ってないし、廃棄するとも言っていない。あくまで凍結なのだ。凍結とは、あるものをいったん倉庫にしまっておくという意味なので、いつでも持ちだすことは可能だ。

 北朝鮮の真意を考えれば、これまでに開発した核を保有したまま、今後核を作らないことを条件に(裏では密かに核の完成を目指しながら)、アメリカと折り合いをつけ、経済活性化に邁進するつもりだろう。このまま2年ぐらい持ちこたえれば、北朝鮮の核能力は完全なものになるからだ。そうすればアメリカも認めざるを得ないと考えているのだろう。

 そして焦点になるのは、こうした北朝鮮の思惑をアメリカが容認するかどうかだ。アメリカは絶対妥協しないだろう。トランプ大統領は、北朝鮮がアメリカに届くICBM発射実験と核実験をやめれば、妥協するのではないかという観測もあるが、それはないと考えていい。

 トランプ大統領の発言が二転三転しているとはいえ、北朝鮮の非核化は「完全かつ検証可能で不可逆」な形でないとダメだという点では一度もブレていない。それには理由がある。

 北朝鮮が核を持てば、イランがさらに核保有の意思を強めるからだ。そしてイランが持てばサウジラビアやアラブ首長国連邦も持つだろう。そうなれば、日本と韓国も安全保障政策を見直さなければならなくなり、「核の世界」が現実になりかねない。

 これを阻止するためには、やはり北朝鮮の核保有を完全に潰さなければならない。北朝鮮核問題を曖昧にすれば、トランプ大統領の指導力に疑問符が付き、同盟国の信用失墜は免れないだろう。
トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談が実現する方向に動いたことを伝えた街頭テレビ=2018年3月(寺河内美奈撮影)
トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談が実現する方向に動いたことを伝えた街頭テレビ=2018年3月(寺河内美奈撮影)
 今回の南北首脳会談が過去の首脳会談と異なるのは、北朝鮮が立場上優位に立っていることだ。核を事実上保有する金正恩委員長とそれに対応できるカードを持たない文在寅大統領という構図は変わらない。

 そもそも、首脳会談で韓国政府が実現しようとする目標は「朝鮮半島の平和体制」構築という曖昧な原則合意を取り付けることでしかない。南北が終戦を宣言し、「平和協定」を結ぶ平和体制構築のために、南北間で交流を拡大することに合意はするだろう。

 これを大きな成果に見せかけることは可能だが、平和体制構築のための前提条件である「終戦宣言」や平和協定の締結も、結局はアメリカの同意がなければ無意味だ。ゆえに、今回の首脳会談は一過性の政治ショーで終わる可能性は高く、真に評価するためには、米朝首脳会談の結果を待つしかないのだ。