ただ、『ニュース女子』で報じられたように、彼らがどこかの団体や組織から日当を受け取っているとか、韓国人や中国人が紛れ込んでいるという事実は、全く確認できなかった。既存基地や警察官への暴行・傷害事件も、私の取材中は全く確認できなかった。全ての現場で、反対派よりも基地を警備する沖縄県警や、応援できた日本各地の警察官の人数の方が圧していたからである。

 反対派の多くは、成田空港建設反対の「三里塚闘争」からデモに参加してきた、などという筋金入りの猛者もいたが、ほとんどが高齢者で、その活動資金は年金や貯金を取り崩した自腹か、それ以外ではほぼ全てを寄付に頼っている。
 
 だから私も、現場で何度も寄付を頼まれたので都合数回、3千円ほど寄付ボックスに野口英世を投入している。が、彼らの活動は組織や法人やまして特定の国家が支援する系統だったものではなく、あくまで個人とその寄付によってまかなわれている。

 その点で言えば朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣デモにおいて、韓国全土で数百万人を動員した集会などは、会場にステージを建設してスクリーンをつくり、著名歌手を登場させるという演出まであるのだから、組織力・動員力という意味では沖縄の反基地運動はあまりにも個人的で小ぶりなものである。

 また、中国・韓国出身者と思しき参加も確認できなかった。ただ、時期によっては同じ海軍基地問題を抱える韓国の島・済州島と相互に連帯している日本の市民団体の招聘(しょうへい)によって、沖縄~済州島の連絡網が構築されている場合があり、この時のみ韓国人が抗議集会に参加する場合がわずかにあるそうである。だが、抗議の主体は圧倒的な割合で日本人高齢者である。

 このような事実を『ニュース女子』はほとんど考慮していないどころか、前提の取材すらほとんど行っていないことがBPOの意見書から判明した。

 BPOの決定は政治的左派とか政治的右派といったイデオロギーに拘束されたものではなく、単に放送の事実関係とその取材過程を分析・検証したモノで、右でも左でもなく単に『ニュース女子』当該回で放送された事実が本当か否か、の一点に絞られていた。結果、事実ではないと結論され、「重大な放送倫理違反があった」と判断された。この結論は妥当であると言うほかない。

 そして3月8日、BPOは続けて申立人の一人である、「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)氏に対して「(沖縄反基地運動家ら)テロリストの黒幕」と『ニュース女子』で名指しされたことは、「名誉毀損の人権侵害が成立する」と結論した。辛淑玉氏に対する名誉回復がどのような形でなされるのか。これは法廷闘争に移行するものと予想される。
「ニュース女子」に対し、抗議の記者会見をする「のりこえねっと」の辛淑玉共同代表(右)ら=2017年1月、国会
「ニュース女子」に対し、抗議の記者会見をする「のりこえねっと」の辛淑玉共同代表(右)ら=2017年1月、国会
 私は、ごく基本的な言論の姿勢として、その結論が政治的右派に偏向していたとしても、政治的左派に偏向していたとしても、どちらでもよいと思っている。よく「偏向報道」が取り沙汰され、報道や論評の姿勢が右や左に偏っていることが非難の対象となる。

 が、人間の目線と思考が介在する以上、真に中立的報道などできようがないのである。例えばパレスチナ問題を報道するとき、報道陣がいくら客観的中立的に務めようとしても、でき上がったビデオや文章は、必ず親パレスチナ・反イスラエルのニュアンスがにじみ出たり、その逆もまたしかりなのである。