著者 富士一平(三重県)

 日本では今、北朝鮮のミサイルや核開発をきっかけに安全保障問題がクローズアップされている。それだけではなく、少子高齢化や医療、介護、年金といった社会保障、教育、エネルギーなど緊急を要する課題が山積している。それぞれ、優先順位をつけがたい切実な問題であることは言うまでもないが、少子化問題こそ最優先されるべきだと私は考える。

 そもそも少子化問題は「少子高齢化」とひとくくりにされがちだ。とりわけ「高齢化」の方に関心が集まってしまうために、「少子化」の逼迫(ひっぱく)性について国民の認識が全く進んでいないと感じる。

 確かに「高齢化」は社会保障に直結する。その上、高齢者層をターゲットとした各種産業における新製品やサービスの開発や、近年頻発する高齢者特有の交通事故など、経済的にも社会的にも注目が集まるのは自然なことだろう。それに比べて、少子化問題は一見すると緊急性は低いかもしれない。しかし、国の存続をおびやかす重大な危険をはらんでいる点があることを、一体どれだけの国民が意識しているだろうか。

 この問題は、国家予算をいくら投じたところで一気に解決することなど決してない。では、国が現在行っている政策が果たして有効なものといえるだろうか。私はむしろ悪い方向に進んでいる気がしてならない。

 その理由は、全ての政策が表面的でしかなく、子育てや家族のあり方といった「少子化」が内包する根本的な問題をあまりにも軽視し過ぎているとしか言えないからだ。一言でいえば、合理性を重視するばかりで「哲学」がないと言うことだ。

 今、行われている政策はこうだ。まず個人所得を上げて、結婚や出産がしやすい環境をつくる。保育園を増やして、夫婦共働き家族を増やす。そして、女性の社会進出を推進する。

 しかし、そこには「なぜ男女は結婚するのか、そして子供をつくるのか」ということや「子供を保育園に預けることで、親が子供に愛情を注ぎ、育児、しつけを行う時間が少なくなってもよいのか」、「子供の将来にとって望ましい家族の姿とは」という、当然であり最も根本的な部分を見落としている。
少子化などの影響で人口が伸び悩み、閑散とする六甲アイランドの中心部=神戸市東灘区(小松大騎撮影)
少子化などの影響で人口が伸び悩み、閑散とする六甲アイランドの中心部=神戸市東灘区(小松大騎撮影)
 種族保存の本能とまで言わずとも、多くの人は成人してまもなく自分の子供が欲しくなるものであり、また、異性と結婚して家族を持ちたいと思うものだ。将来を思えば、育ててくれた親は自分よりも先に亡くなり、その後一人で生きていくよりも、若いうちに家族をつくりたいと思うのが一般的であろう。そして、子供が多く欲しければ、各人がそれなりに婚期を考える。

 多様性が尊ばれる現在であるが、この点は国策を考える上で基本的に持っておかねばならない共通認識である。