著者 高幡和也

 2017年9月、政府が「人生100年時代構想会議」を設置したことで、「人生100年時代」というフレーズが一気に注目を浴びている。しかし、何だかしっくりこない。

 そもそも、この「人生100年時代」は、英ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授の著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提言された言葉だ。グラットン氏によると、2007年に日本で生まれた子供については、107歳まで生きる確率が50%もあるという。

 平均寿命がどこまで伸びるのかは別として、日本では深刻な高齢化が加速している。内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、2016年10月1日現在の日本の総人口は1億2693万人で、そのうち、65歳以上の人口割合、つまり高齢化率は27・3%にのぼる。

 1996年の高齢化率が15・1%だったことを考えれば、日本における高齢化のスピードがいかに速いかわかるだろう。さらに同白書によれば、2065年には2・6人に1人が65歳以上の高齢者となると見込まれている。

 実は、この日本の深刻な高齢化の状況こそが「人生100年時代」というフレーズがしっくりこない理由である。なぜなら、日本では人生100年時代が「到来しようがしまいが」、少子高齢化とそれに伴う人口減少が驚異的なスピードで進んできたからである。もちろん今後もハイペースで進んでいくだろう。

 100年の人生で「どう働くか」「どう学ぶか」「どう生きるか」は、寿命が延びるにつれて変化するわけで、必然的に見直さざるを得ない「ライフデザイン上の問題」である。日本の少子高齢化に伴う人口減少問題とは、少し隔たりがある気がしてならないのである。

英ロンドンビジネススクールの
リンダ・グラットン教授。安倍政権の看板政策
「人づくり革命」を検討する
「人生100年時代構想会議」の有識者議員を務める
(宮川浩和撮影)
 前述のグラットン氏によれば、人生100年時代においては、これまでの「教育」「勤労」「引退」の3ステージの人生からマルチステージの人生へと変化するという。確かに、人生におけるステージが多様になり、そのステージが変化する契機においては「学び直し」も求められるだろう。結果としてそれが個々のスキルを向上させ、高齢化社会における生産力と成長力を上げることにつながっていくことは十分に理解できる。

 だが、日本における急激な人口減少と人生100年時代とを関連付けてしまうと、本来、緊急的手当てが必要な少子化対策への意識が希薄になりはしないだろうか。繰り返すが、実際に寿命が延びて人生100年時代が「やってきても」「やってこなくても」日本の少子高齢化は進み、それに伴う人口減少が加速していくのである。

 人口減少は国内市場の縮小を生み、国内市場の縮小は投資先としての「魅力の低下」を生んでいく。「学び直し」による個々のスキルアップは生産力と成長力を向上させるかもしれないが、それは急激に進む人口減少から派生するさまざまな弊害を本当に補正しきれるほどのものなのだろうか。