では、実際に人口減少がこのまま進めばどうなるのか。さまざまな意見があるが、シンプルに考えれば、国土交通省のホームページ(人口減少が地方のまち・生活に与える影響)で指摘している主たる問題が、将来の「都市」についても当てはまるのではないかと思う。以下がその主な問題点とされるものだ。


(1)生活関連サービス(小売・飲食・娯楽・医療機関等)の縮小
(2)税収減による行政サービス水準の低下
(3)地域公共交通の撤退・縮小
(4)空き家、空き店舗、工場跡地、耕作放棄地等の増加
(5)地域コミュニティーの機能低下



 むろん、これらがすべて都市部の人口減少時に引き起こされるわけではないし、影響や程度も地域ごとの特性によるところが大きい。しかし、少なくとも、五つの問題点のうち、(1)(2)(4)は地方・都市部問わず、いずれの地域においても共通して起こり得るものではないだろうか。

 これとは逆に、人口減少を肯定的に捉える声も散見される。その中でも多く聞かれるのが、今後人口減少が進んでも「過去の日本の人口に戻るだけ」「イノベーションや働き方改革こそが生産性と成長力を向上させる」といった意見だ。

 では、過去の日本の人口と将来の推計人口の中身を比較してみよう。総務省統計局「人口の推移と将来人口」を見ると、1965年の日本の人口は約9920万9000人である。この数字に近い将来推計人口を見てみると、65年から90年後となる2055年の約9744万1000人である。

 この数字だけを見れば、確かに「過去の日本の人口に戻るだけ」かもしれない。しかし、その年齢別構成比を見ると明らかに「過去の日本の人口に戻るだけ」が誤った認識だと分かる。1965年の生産人口(15~64歳)割合は68%、老年人口(65歳以上)割合は6・3%であるのに対し、2055年の推計では生産人口割合が51・6%まで減少する一方で、老年人口割合は38%まで上昇するのである。

 さらに何よりも重要な点は、今後イノベーションや働き方改革によって生産力や成長力が向上したとしても、上記の人口割合と総人口の減少がこれからの日本ではそれぞれ「一方向」にしか進まないということである。つまり「高スキルの高齢者人口」さえ減少を続けるのだ。
2017年11月、自民党の人生100年時代戦略本部の提言を首相官邸で安倍晋三首相(右)に手渡す本部長の岸田文雄政調会長(斎藤良雄撮影)
2017年11月、自民党の人生100年時代戦略本部の提言を首相官邸で安倍晋三首相(右)に手渡す本部長の岸田文雄政調会長(斎藤良雄撮影)
 人生100年時代を見据え、そのための備えをさまざまな観点から官民一体となり提言し、個々がそれに向き合うことは日本のみならず世界にとっての潮流でもあるだろう。しかし、日本のように急激な人口減少が続く場合、まずはそれに歯止めをかけなければならないのではないだろうか。

 もちろんその歯止めとは「増加」ではなく、「減少幅」や「減少速度」の縮小で構わない。100年の人生においてそのスキルを個々が磨き続けることにより、生産人口年齢が75歳もしくはさらにその上まで引き上げられたとしても、このままでは「どの年代の人口層すべてが絶え間なく減少」していくのである。そこに触れずに「人生100年時代」を語るのは、やはりしっくりこないのである。