斉藤章佳(精神保健福祉士・社会福祉士)

 最近、日本の本丸といえる財務省と、芸能界の本丸といえるジャニーズ事務所が炎上している。いずれも、共通しているのは「男性優位社会」の中で起きたアルコール問題に関連する性暴力(セクハラ)である。

 世界保健機関(WHO)は1979年に健康問題、職業問題、事故、家族問題、犯罪を引き起こす飲酒を問題飲酒と定義している通り、問題飲酒と犯罪には古くから親和性があり、これは影山任佐氏の名著『アルコール犯罪研究』(金剛出版)に詳しい。

 特に、筆者は性犯罪者の地域社会内での治療を日本で先駆的に実践してきた経験から、アルコールが引き金になる性犯罪のケースを数多く見てきた。本稿では、この「アルコール関連問題」と「性暴力」という二つの観点から、TOKIOのメンバーだった山口達也の件について私論を述べたい。

 まず、アルコールに関する治療(恐らく内科治療)目的で約1カ月入院したことを山口本人が明らかにしているため、アルコール依存症の診断基準を見ながら彼の深刻度について考えたい。尚、本稿ではアルコール依存症を「アルコール使用障害」と同等の意味で用いることを最初に断っておく。

 そもそもアルコール依存症の定義はさまざまだ。筆者は「酒をやめざるえない状況に追い込まれた人」という、精神科医で評論家だった故なだいなだ氏の定義を用いるが、精神科の依存症治療で使われている最新の診断基準であるDSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)によると、アルコール使用障害は、11ある項目の中で2つ以上が12カ月以内の間に当てはまる場合に診断される。
※写真はイメージ(iStock)
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 以下、参考までに診断基準を掲載する。

① アルコールを意図していたよりもしばしば大量に、または長い期間に渡って使用する。

② アルコールの使用を減量または制限することに対する、持続的な欲求または努力の不成功がある。

③ アルコールを得るために必要な活動、その使用、またはその作用から回復するのに多くの時間が費やされる。

④ アルコールの使用に対する渇望・強い欲求または衝動。

⑤ アルコールの反復的な使用の結果、職場・学校または家庭における重大な役割の責任を果たすことができなくなる。

⑥ アルコールの作用により、持続的あるいは反復的に社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにもかかわらずその使用を続ける。

⑦ アルコールの使用のために、重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または縮小させていること。

⑧ 身体的に危険のある状況においてもアルコールの使用を反復する。

⑨ 身体的または精神的問題が、持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいと知っているにもかかわらず、アルコール使用を続ける。

⑩ 耐性、以下のいずれかによって定義されるもの

a. 中毒または期待する効果に達するために、著しく増大した量のアルコールが必要。

b. 同じ量のアルコールの持続使用で効果が著しく減弱。

⑪ 離脱、以下のいずれかによって定義されるもの

a. 特徴的なアルコール離脱症候群がある(アルコール離脱の基準AとBを参照)。

b. 離脱症状を軽減したり回避したりするために、アルコール(またはベンゾジアゼピン等の密接に関連した物質)を摂取する。

 以上の全11項目を見る限り、山口には複数の項目が該当するのが分かる。具体的には、山口は飲みすぎて仕事などに支障をきたしており(①に該当)、周囲からアルコール問題を指摘されていた(②に該当)。退院してすぐの大量飲酒(④に該当)。アルコール性肝障害の診断もあり(⑨に該当)、焼酎を相当量飲んでいたということから、以前と同量の飲酒量では酔えない「依存物質への耐性」がみられる(⑩に該当)といったものだ。