報道関係各位
お酒を飲んで、被害者の方のお気持ちを考えずにキスをしてしまいましたことを本当に申し訳なく思っております。被害者の方には誠心誠意謝罪し、和解させていただきました。
ジャニーズ事務所


 組織の危機対応としては、あまりにも簡素で、誠意に欠ける内容と多くの人が感じたことだろう。本来であれば、企業とっては、何よりも初動対応において世論の反応を予測した上で発信することがダメージコントロールの基本である。

 特に今回のような未成年を対象にした性的事案については、行動の主体がいくら国民的人気アイドルグループの一員とはいえ、擁護する世論が湧き上がることが皆無に近いことは容易に予想できたはずである。

 しかしTOKIOは、事務所の経営陣にとって、あまりにも多くの時間と労力、心血を投資してきた存在だった。大切にコツコツと育ててきた存在ほど執着してしまい、合理的な判断ができなくなるのだ。それがコメントの短さや形式的な事実公表につながってしまった。

 この流れはその後も続いた。山口本人の会見に弁護士が同席し、被害者側のコメントが読み上げられたり、自ら今後の芸能活動への希望を述べたのである。改めて会見や質疑を分析しても、事務所レベルで影響性を考慮し、内容を精緻に用意したようには感じられなかった。

 またTOKIOメンバー4人の会見にしても、やはり事務所関係者が同席すらしていなかった。これでは、メンバーの心理的混乱と、具体性を欠く事後対応、今後の処遇の不透明さのイメージだけが残っただけに終わった。一部では「同情を買おうとしているのでは」との臆測を生む結果まで伴った。

 もちろん、山口を擁護しているとも取れるコメントを発信する有名人や、マスコミの論評もわずかながらあった。TOKIOのファンの中にも、擁護や励ましはもちろんのこと、被害者を批判する向きもあっただろう。
山口達也の契約解除に関して、ジャニーズ事務所が報道機関に送った文書
山口達也の契約解除に関して、ジャニーズ事務所が報道機関に送った文書
 もし、この一部の動きが山口本人や事務所関係者の耳にも入っていたとすれば、多面的影響を考慮した冷静な対応からますます逸脱していく。

 人は危機的な状況に陥れば陥るほど、自分に都合の良い情報だけを集める習性がある。この「確証バイアス」により、山口や事務所が損失回避感情をさらに強め、半ば自分の内面では言い訳ばかりが先に立ち、失敗を正面から受け止める心理からは遠ざかっていった可能性がある。

 世論による激しい批判にも関わらず、時間をかけて本人の会見、メンバーの会見と段階的に後手後手で対応せざるを得なかった事務所の手法は、最終的に退所の報告まで続くこととなった。