家族がいなくてフリーランスの仕事をしている40代。昔だったら少数派だったかもしれないが、こういう立場の人間は確実に増えている。

 フリーとはいえ、筆者のようなライターとタレントでは、立場が違うと思う人も多いだろう。しかし、才能と能力で勝負している浮き沈みの激しい世界で生きているため、重なる部分もあると筆者は思っている。

 山口の場合は2008年に結婚し二児の父親だが、2016年に離婚している。

 仕事面では、ジャニーズ事務所という大手芸能事務所に所属してTOKIOという人気グループのメンバーとして活躍している。その意味では大手企業に所属しているような気持ちもあったのかもしれない。記者会見で山口が「TOKIOに席があるなら戻りたい」と言ってしまう姿は、どこか自分よりも会社やチームに自分のアイデンティティーを置いているようにみえた。

 筆者の仕事はドラマレビューが中心なので、俳優として活躍する長瀬智也や松岡昌宏については演技の力量や人気はある程度理解できるのだが、バラエティーを主戦場とする他のメンバーについての分析をするほどの知識は持ち合わせていない。

 山口に関しても『ザ!鉄腕!DASH!!』を時々見るくらいで、彼の外見以外の能力についてはよく知らない。多分、世間一般の評価もそんなものなのだろう。おそらく、そのことに一番おびえていたのが山口自身だったのではないだろうか。

 30代で自分に何もないと気づいたのなら、音楽や演技の勉強を改めてすることで自分を磨くか、芸能以外の仕事に活路を見いだしてリタイアすることも考えるだろう。だが、山口が不幸だったのはTOKIOとしての人気はとても高かったことだ。

 3・11以降は福島農産物のイメージキャラクターとしても活躍しており、社会的信用を得ていたのは事実である。彼の酒癖の悪さや女癖の悪さが生来のものなのか、芸能の仕事をはじめてからなのかは分からないが、どうも報道をみていると、自分自身のタレントとしての現実に直面することから逃げた結果、依存症的に刹那の快楽におぼれ、思考停止してしまったように見えて仕方がない。
 
 一方、記者会見に登場したTOKIOを見たときに思ったのは「全員、見事におっさんになったなぁ」という感想である。
会見する(左から)長瀬智也、国分太一、城島茂、松岡昌宏=2018年5月2日、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
会見する(左から)長瀬智也、国分太一、城島茂、松岡昌宏=2018年5月2日、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
 最年少の長瀬智也がすでに39歳で、残り3人は40代なのだから当然といえば当然なのだが、記者会見で見せた山口達也の子どもっぽい姿とはまるで対照的だと思った。

 誤解を恐れずに言えば、TOKIOの会見は完璧だったといえる。山口に対する厳しい意見の中に見える仲間として責任を取ろうとする姿勢、何より被害者となった未成年の女性に対する配慮が見事であった。松岡昌宏が山口に対して「あなたは病気です」と指摘した辛辣な発言や、「アルコール依存症の診断が出ていない」という報告はファンならずとも一番知りたかった衝撃の事実だったに違いない。

 TOKIOに対する意見に同情的なものが多く、彼らの人気失墜につながっていないのは、この会見があまりに見事だったからだろう。非難されているのは、彼らを会見の場に登壇させたジャニーズ事務所と山口達也に対するものがほとんどである。大企業の謝罪会見ですら、謝罪自体が被害者に対するセカンドレイプになっているかのような無神経なものが多い中で、どこを切り取っても一部の隙もない完璧な会見だったと言える。

 しかし、だからこそ思うのは、最終的に山口を追い詰めてしまったものは、この会見で見せたTOKIOの持つ「完璧さ」そのものだったのではないかということだ。