岡田晃(経済評論家、大阪経済大客員教授)

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が再任され、2期目の任期に入った。黒田総裁は再任後初めてとなる記者会見で消費者物価上昇率「2%」の目標を堅持して金融緩和を継続する考えを強調し、出口戦略について「検討する局面にない」と明言した。2期目の黒田総裁にとって、2%の目標をどのように達成するかが最大の課題となる。

 黒田総裁が5年前の就任直後に「異次元の金融緩和」に踏み切ったことは、従来の日銀の常識を破るものだったと言ってよい。その結果、景気は回復を続け、消費者物価もプラスに転じ、少なくともデフレ的な状況ではなくなりつつある。

 しかし、それでもなお2%という目標には遠い。その一方で、長期間の超金融緩和を続けることで、さまざまな副作用も指摘され始めるなど、やや手詰まり感が出ているのも事実だ。それらを乗り越えて目標を達成するには、何らかの形で「常識破り」の次の手が必要なように見える。

 では、2期目の黒田総裁は何をすべきか。ここで戦国時代に目を転じると、織田信長が行った数々の「常識破り」の政策にヒントがありそうな気がする。

 信長は戦国時代の常識を越える新しいやり方で、天下統一を目指した。長篠の戦いでは、3000丁といわれる鉄砲の3段撃ちで武田騎馬軍団を打ち破ったことはあまりにも有名である。そのほかにも当時の人たちが考えもしなかったような画期的な戦術や政策を数多く打ち出している。

 例えば、「兵農分離」などは代表的だろう。それまでの多くの戦国大名は戦が起きると農民を足軽兵士として動員するのが普通で、田植えや稲刈りの季節になると、戦を中断して、撤兵を余儀なくされていた。

 しかし、信長は農家の次男、三男などを兵士として常時雇いにし、日ごろから訓練して一年中いつでも戦ができる態勢を整えた。織田軍の長期遠征を可能にしたのである。
2018年4月、日銀本店で開かれた支店長会議に臨む黒田総裁(左から2人目)ら
2018年4月、日銀本店で開かれた支店長会議に臨む黒田総裁(左から2人目)ら
 かたや、敵の兵士は農繁期が近づくと、自分の田畑がどうしても気になる。他の大名は農閑期に戦を仕掛けるしかないのである。その後の歴史を知っているわれわれは「兵農分離」は当たり前のように思えるが、それを初めて実行した信長は時代を先取りした発想の持ち主だったといえる。

 さらに、兵農分離政策は軍律改革や本拠地の移転、城下町の発展という効果ももたらした。信長は戦いに勝利して敵の領地に進軍した際の略奪を禁止した。戦国時代には略奪は一般的に行われており、普段は貧しい農民兵士にとって一種のご褒美のような感覚もあったようだ。