「低迷が続く経済」「混迷する外交」


 そう思えば、「あまちゃん」に自衛隊が登場しなかったのは不幸中の幸いだったかもしれない。もし出ていたら、どんな描かれ方をしたか、分かったものではない。

 それが証拠に、平成25年7月13日「ニュース7」が、陸自の戦車派遣を陰湿に批判する植村秀樹教授(流通経済大学)のコメントを流した。陸自は「復興の町おこし」として地元から要請され戦車を派遣した。その地元を舞台にした戦車アニメがヒットしたからである。喜んだ地元民やアニメファンもいただろうが、NHKニュースは左翼に批判させた。

 この植村教授は、NHKが重用する反自衛隊の「有識者」。8月4日の「日曜討論」にも出演し、防衛大綱見直しの動きを「周辺諸国への影響を考えるべき」「やってはいけない挑発的表現」と批判した。集団的自衛権行使への解釈変更も「この国のかたちを変える」「姑息な手段」と「強く非難」した。すべて私の意見と正反対だ。「周辺諸国への影響」ではなく周辺諸国の脅威を踏まえ、日本の防衛を第一義に考えるべきであろう。

 討論には、前泊博盛教授(沖縄国際大学)も出演。「専守防衛に徹すべき」、「歴史認識が右傾化している」等々持論を展開した。「(中国軍による)レーダー照射を受けないように、しっかりやっていくべき」との意味不明の発言や、「米軍に盲従している」云々の不適切な表現も飛び出したが、司会者は咎めなかった。もはや個々に論評しないが、表現も内容も公共放送の品位を汚す発言と考える。

 平成25年元日の看板番組のゲストは孫崎亨氏だった。「クローズアップ現代」の皮切り(1月7日)のゲストは寺島実郎氏。両名とも拙著『「反米論」は百害あって一利なし』(PHP研究所)が指弾した論敵だ。その他、今年もNHKは堂々とリベラル派を重用する。確信犯と評してよかろう。起用されたゲストの発言を指弾してもキリがないので以下、前掲鼎談で八木氏も指弾したNHK自身の認識を取り上げよう。

 問題の番組は、平成25年7月にスタートした「戦後史証言プロジェクト」(Eテレ)。番組の公式サイトは「低迷が続く経済、領土問題などで混迷する外交」という。だが、本当に経済は「低迷」しているだろうか。数字が示す事実は違う。外交が「混迷」しているだろうか。明らかな誤報ないし世論操作であろう。

 7月6日放送第1回のテーマは沖縄。「返還後も基地は固定化され、墜落事故、アメリカ兵による犯罪など、過重な基地負担に苦しみ続けている」等々「焦土の島から基地の島へ」と題した偏向した視点であった。第2回は「水俣 〜戦後復興から公害へ〜」。第3回は「釧路湿原・鶴居村 〜入植地から国立公園へ〜」。

 そして第4回が「猪飼野 〜在日コリアンの軌跡〜」。NHKいわく「在日コリアンの人々は、南北分断、帰国運動など東アジアの激動に翻弄され、差別や偏見に苦しみながら生きてきた」。だとしても報道すべき「戦後史」は他にいくらでもあろう。日本人から受信料を強制徴収しながら、日本の暗い側面ばかり報じる。日本を暗く否定的にしか描かない。どういう神経なのだろうか。

 この番組は三年にわたり放送される。初年にして以上の如し。先行きが空恐ろしい。

 三度私事ながら、平成25年の大河ドラマ「八重の桜」にも違和感を覚えた。

 まず、禁門の変(蛤御門の変)を描いた3月31日放送回で「長州は3人の家老の首を斬って幕府に恭順の意を示し」云々のナレーションが流れた。

 だが、史実は自刃(切腹)である。「3人の家老」の一人、益田親施(弾正右衛門介)は永代家老の家に生まれ、吉田松陰とも親交があった。自刃した親施は、私の父方の大叔母の祖父に当たる。あたかも斬首刑のごとき表現に、親族として強い違和感を覚えた。ちなみに明治33年、益田家は男爵を授けられた。NHKの認識は明治政府とも反する。

 同様に、4月7日放送回以降、岩倉具視の描き方にも違和感を禁じ得ない。岩倉は母方の大叔母の祖父に当たる。あそこまで金に汚く卑しい人物に描く必要があったのか。いかなる史実に基づいた演出なのか。縁戚者ならずとも、そう感じた視聴者もいるのではないか。

 ともに、会津の視点で描いた結果なのかもしれない。長州や公家という勝者ではなく、敗者の視点で描いた。だから致し方ない。東日本大震災を受け、福島県(会津)を舞台に選んだ結果に過ぎない…。

 もし、以上の反論が許されるなら、それは第二次世界大戦ないし大東亜戦争にも当てはまる。だが、NHKは決してそう言わない。敗者日本ではなく、勝者となった連合国の歴史認識を採用する。勝者が掲げた東京裁判史観の見直しを、彼らは決して認めない。

 いくら長州家老や公家を貶め、卑しめても勝敗の結果は変わらないし、会津が浮かばれることもない。敵を悪者に描くだけの手法は、文芸・学芸を問わず、表現として稚拙に過ぎよう。プロとして恥ずかしい。