テレビを視ない人はテレビがあっても受信料を
払わなくてよい英国の「あたりまえ」


 日本の役人は、消費税のケースでもそうだが、「欧米でもやっていますから」と国民を韜晦しておいて、そのじつ、欧米のシステムとは似て非なるムチャクチャな専恣を、日本国民向けにやらかすことを常套としている。

 NHKもこの役人的発想で行為することを恥じていない。有無を言わさずまきあげる受信料は実質税金であり、人々から堂々と租税を取る者は、山賊でなければ役人と呼ばれるのがふさわしい。

 世界最古(創立1922年)の国家公営放送組織である英国のBBCが、現在まで勅許されているところのテレビ受像機「ライセンシング」制度(=戸別料金徴集制度)は、NHKがその歳入システムの参考にしていると称し、「外国でもやってますから」とよくひきあいにも出す海外見本の一つだ。しかし、これまた、似て非なるものだ。それを確認するのは日本国民にとって有益であろうと信じられるから、以下、少しご紹介しよう(典拠を確かめたい方は、インターネットの英文検索で「lisence」「bbc」等のキーワードを打ち込めば、簡単にヒットします。言い遅れたが、兵頭に渡英経験は無い)。 

「テレビジョン・ライセンシング」は、わがNHKで言うところの、テレビ受信契約に相当する、第二次大戦後の英国民の世帯別のテレビ受像機登録のことだ。これは法律で義務付けられており、実質「税」であると英国では認定されている。英国ではその受信料のことを「ライセンス・フィー」と呼んで来ている。私見ではこの「ライセンス」の語感は、初期のラジオ送受信機が一種の特権材・贅沢品であり且つ防諜上の問題でもあった時代の遺風かと想像される(ちなみにNHK受信料を英訳すれば「サブスクリプション・フィー(subscription fee)」であるらしい)。

 英国内で、地上波・衛星・ケーブルによるBBCの動画放送をリアルタイムで受像できる(またはその動画信号を受信と同時に録画し得る)機器を持っている世帯やオフィスは、(人毎や機器毎にではなく)その戸別・敷地別にまとめてひとつの「ライセンス」を取得するように、英国の法律は求めている。

 このテレビのライセンス・フィーは、BBC予算事業部(が雇った外部請負会社の集金人)によって集められ、いったん「整理公債基金」(英国の各種公債基金が合同されており、利子払いを保証する)に収納されてから、あらためてBBCトラスト(BBCの運営体)の歳入となる。その歳入から、BBCのテレビ放送やラジオ放送や有線放送の経費、および徴集の業務にかかるコストまでもが、支弁される(徴集コストは、全ライセンス料歳入の三・六%ほどになるらしい)。

 ライセンス・フィーの価額であるが、それについては英国政府とBBCトラストの間の定期協議で相談されて、「文化・メディア・スポーツ省」の大臣が定める。そのように、過去の立法が授権をしている。
 現行のカラーテレビのライセンス料は、一般家庭やオフィスや商店では、年額145・5ポンド/戸である。ホテルの場合は、一棟の客室15室までは1戸扱いで年額145・5ポンド。それより多いときは5室までを1戸とみなして、加算されていく仕組みだ。

 75歳以上の老人については、「労働&年金省」が、ライセンス・フィーを肩代わりして支払っている。

 そして以下の場合には、テレビを持っていても、その世帯はライセンス料を払う必要は無いと認められている。

・音響の再生や発生のためだけにデジタル受信機器を使っている場合。

・テレビ機器を、デジタル・ラジオの受信機として使っている場合。

・閉鎖的回線の再生機としてテレビを設置し使用している場合〔放送を受信せず、構内放送の端末や監視カメラのモニター等として使うケースか〕。

・すでに録画されているDVDやビデオを再生するためにそのテレビを用いている場合(もちろん、今放送されている番組を録画すれば、ただちにライセンス取得義務が発生する)。

・いったん録画したテレビ番組の再送サービスを視聴する場合(そのサービスが著作権法に抵触しないかどうかは別問題として)。

・テレビ機器を、コンピュータ・ゲームのプレイ装置として使っている場合。

 その上で、オンラインの申告書の書式を満たしてそれを電送もしくは郵送し、BBCからそれについてのコンファーム(たしかにあなたの世帯はテレビ・ライセンスは必要としない、との確認)を貰う必要がある。2012年の時点では、全英の40万世帯以上が、BBCに対して、「テレビ受信ライセンスは必要ない」との意思通告をしているそうである。コンファームは、二年ごとの訪問により再審査されて、更新される。

 そのさい、イギリス人が「ゲシュタポ」(ナチス時代のドイツ秘密警察)と陰口する《ライセンスのがれ探偵人》(これはBBCが民間会社に委託している。BBC自身も、隠されたテレビ受像機から漏れ出す微弱電波を60メートル先から探知判別できる特殊車両を11台運用しているといわれる)に対して、自宅の内部をよく見せてやると、話は早いという。そしてその場合には、次のような措置を講じておくことも、BBCによって公式に推奨されている(強制ではない)。

 まず、受像機からはアンテナは取り外すこと。

 次に、アンテナの端子差込口にもカバーをし、使用できないようにしておくこと。

 その上で、テレビ信号が確かにまったく受信されないことを示すこと。

 どうやら、「民放は視聴するけどBBCのチャンネルだけは、選別的に視聴をしないから」との理由での「ライセンス料のがれ」をすることは、英国では不可能らしく見える。