2018年05月17日 12:52 公開

米国のミシガン州立大学は16日、大学のスポーツ医だったラリー・ナッサー被告(54)から性的暴行被害を受けた女子体操選手など332人に対し、総額5億ドル(約550億円)の損害賠償金を支払うことに合意した。ナッサー被告は今年1月、治療と称して未成年を含む女性を暴行した罪で有罪となり、40年から175年の禁錮刑を言い渡されている

交渉はロサンゼルスの弁護士事務所マンリー・スチュワート・アンド・フィナルディが被害者を代表して行ったもの。

ジョン・マンリー弁護士は、「この歴史的な合意は、勇気ある300人以上の女性や少女が立ち上がり、沈黙を破ったおかげで実現した」と説明した。

その上で、「この合意による遺産」が米スポーツ界での虐待を根絶することにつながることが、彼女たちの「希望」だと付け加えた。

一方、ミシガン州立大学のブライアン・ブレズリン学長は書面で「生き延びた人々とその家族に対し、彼らが経験してきたことに深くお詫びすると共に、その経験を語った勇気を称えている」と述べた。

「性的虐待への認識と阻止について、大学内やコミュニティー内に変革が必要だと認識している」

<おすすめ記事>

5億ドルのうち4億2500万ドルは対象者に支払われ、残りの7500万ドルは、ナッサー被告や同大学にさらなる疑惑が持ち上がった時のために留保される。

弁護士事務所と大学の発表によると、合意には守秘義務契約は含まれていない。また、体操選手がトレーニングをしていたテキサス州の施設を管理する米国オリンピック委員会(USOC)や米体操連盟には言及しなかった。

声明では賠償金の分配方法は明らかにされていない。

オリンピックチームを監督する米体操連盟では、少なくとも156人の女性選手がナッサー被告による性的被害を訴えた後、会長を含む全役員が辞任した。

ミシガン州立大学では、ナッサー被告による被害を訴えられていたにもかかわらず役員が措置を取らなかったとの批判が相次いだ。

ルー・アナ・サイモン学長(当時)はナッサー被告に有罪判決が下ったその日に辞任したが、大学による隠蔽は否定している。

ナッサー被告はすでに、未成年ポルノの所持で60年の禁錮刑を連邦裁判所に言い渡され、服役中。連邦および州の刑期を終えても生存し、保釈された場合には、州の刑期が175年に延長される。


<分析>組織の責任を問う――ラジニ・バイデャナン、BBCニュース、ワシントン

ナッサー被告の性的虐待を生き延びた若い女性の多くは、当人の行為だけでなく、それを可能にした組織に怒りを感じている。

被告はミシガン州立大学で何十年も働いていたが、多くの被害者は自分たちの訴えが大学職員に無視されたと感じていた。

今回の賠償金は、大学側が大きな間違いを認めた証左に他ならない。しかし、最初に公にナッサー被告を訴えたレイチェル・デンホランダー氏を含むサバイバーたちにとっては長い道のりだった。

デンホランダー氏は合意を喜ぶ一方、大学が「改革の機会を逃した」ことを残念に思うと話している。

今年初めの恐ろしい判決言い渡しに出廷した多くの女性を、私は目にした。彼女たちが声を上げたのは、自分のためだけではなかった。自分に加えられた暴力について正義を勝ち取るだけでなく、組織の姿勢や手続きを変えさせて、同じような経験をした他の人にも発言の機会を与えることが、目的だったのだ。


(英語記事 Nassar abuse victims get $500m settlement