吉田良治(大学スポーツマネジメント研究会理事)

 昨年11月の横綱・日馬富士による暴力事件から続く大相撲界の暴力問題、女子レスリングのオリンピック4連覇、伊調馨選手へのパワハラ問題など、スポーツ界に根深く残る暴力や人権を損なう行為が、連日メディアを賑わせている。間もなく平成が終わろうとしているいま、日本のスポーツ界はいまだ昭和の悪しき風習に苦しんでいる。

 2012年12月23日、大阪・桜宮高校で起こった体罰・自殺事件以降、スポーツ指導者の暴力に伴う体罰について、徐々に改善の空気が流れ始めた。

 しかしその後も指導者から女子柔道日本代表選手へのパワハラ問題が発覚し、指導者の解任に発展した。指導者から選手への暴力だけでなく、部活の部員間、とくに先輩から後輩への暴力という、体育会系の悪しき風習が続く。

 天理大学柔道部で起こった選手間の暴力問題では、当時主将のオリンピック金メダリストも暴行現場に居合わせたことが発覚し、長期の謹慎を余儀なくされた。

 この時期は2020年東京五輪・パラリンピック招致活動と重なり、オリンピック選手や日本代表コーチも暴力問題に関与するという日本のスポーツ界に蔓延る負の歴史が、反暴力を掲げるオリンピックの招致に影響する懸念から、国を挙げてスポーツ界の暴力撲滅の動きが加速された。

 体罰を生み出す背景の1つは、大相撲の部屋制度、大学や高校の部活なら合宿生活など、閉ざされた世界が根底にある。指導者と選手、先輩と後輩の関係は狭い世界の中だけで成り立ち、その世界の価値観に偏ることが、体罰を生み出す温床となる。

 自立を促すための指導ではなく、むしろイエスマンを生み出しているのだ。違った価値観に触れ、幅広い選択肢と多様な経験をする機会をもち、スポーツという小さな殻を破ることが必要である。

  2012年の大阪・桜宮高校の体罰・自殺事件後、大阪府と大阪市は府下の高校教員を対象に、元プロ野球選手の桑田真澄氏を講師に体罰防止研修を実施した。しかし、この研修を受けた教員のなかで、その後体罰をした者も少なくない。なかには97回体罰を繰り返した教員もいた。
大阪・高2バスケ部主将体罰自殺問題 大阪市立桜宮高校 =2013年1月13日午前、大阪市都島区(大塚聡彦撮影)
大阪・高2バスケ部主将体罰自殺問題 大阪市立桜宮高校 =2013年1月13日午前、大阪市都島区(大塚聡彦撮影)
 そもそも、再発防止という名のもとに行なわれる研修は単発で行なわれ、不祥事が起こった際の決まり文句〝再発防止に努めます〟と、その場を一時的に凌ぐものが多い。受講者も研修後、一晩寝れば次の日に頭の中に残っているものはほとんどないに等しい。定期的、かつ継続的に実践で生かされるプログラムとその環境整備が重要だ。

 人は皆、欲をもって生きている。欲という向上心をもち成長するのだ。スポーツの世界でも、「勝ちたい!」という向上心がなければ成功することができない。