藤井靖(明星大心理学部准教授、臨床心理士)

 アメリカンフットボールを長年観戦してきた筆者にとっても、初めての光景だった。5月6日、日本大と関西学院大による定期戦において、日大の選手が、関学大のクオーターバック(QB)に対して、悪質なタックルを繰り返し行い、負傷させたのである。

 映像では、パスを投げ終えた後の無防備な相手QBに対して、背後から強いタックルを仕掛けていることが明確に確認できる。当然のことながら、「厳しいディフェンス」と「相手選手を負傷させうるレイトタックル」は全くの別物である。

 今回のレイトタックルは、ルール上明らかな反則であるだけではない。たとえ競技の場であっても、暴行や傷害といった刑事事件にも発展しうる犯罪行為とも位置付けられるのである。

 なぜこのようなことが起きたのか。一般的に、チーム内の厳しい指示系統と上下関係が構築されているアメフトの競技文化を踏まえると、単に一個人の資質に基づく問題行動だと位置付けることは適切ではないと考えられる。

 日大アメフト部は、「最強軍団」とも呼ばれるほどの強さを誇り、全国でも5指に入るほどの強豪校である。アメフトの日本一を決める「ライスボウル」では、1988年から学生チームでは唯一の3連覇を達成した歴史がある。また、大学日本一を決める「甲子園ボウル」の優勝常連校であり、出場回数もトップクラスである。

 ただし、栄光を誇る「関東の雄」も近年は成績が振るわず、昨年27年ぶりに甲子園ボウルを制したものの、歴代優勝回数や出場回数では、関学大に水をあけられている状況である。

 その意味では、「赤(日大)と青(関学大)の名勝負」とも呼ばれた両校の定期戦において、日大側に並々ならぬ対抗意識が働いていたことは想像に難くない。「ライバル」に対するチームとしての高いモチベーションがマイナスに転化され、今回のように、逸脱したプレーの遠因になっていることは否定できない。
アメフト日大フェニックスの練習グラウンドに置かれた練習用具=2018年5月17日、東京都世田谷区(吉沢良太撮影)
アメフト日大フェニックスの練習グラウンドに置かれた練習用具=2018年5月17日、東京都世田谷区(吉沢良太撮影)
 ただ、プレーヤーである学生が主体となって、チームの空気や雰囲気を醸成していると考えるのは表面的な理解でしかない。前述のように、絶対的な監督やコーチの指示系統が確立されているアメフト競技においては、指導者の及ぼす影響力は、白を黒に変えてしまうほどの力を持っている。