2018年05月25日 0:19 公開

ドナルド・トランプ米大統領は24日、北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長にあてた書簡で、6月12日に予定していた米朝首脳会談を中止すると通告した。北朝鮮の最新発言の「強烈な怒りとあからさまな敵対心」を理由にしている。大統領は、世界が「永続的な平和の素晴らしい機会を失った」と書いた。

ホワイトハウスが発表した書簡でトランプ大統領は金委員長を「閣下」と呼び、次のように書いた。

「シンガポールで6月12日に開催予定だった首脳会談は、双方が長く求めてきたもので、そのための最近の交渉や話し合いにあなたがかけてきた時間と忍耐と努力を、非常にありがたく思います。会談は北朝鮮が求めたものだと知らされていましたが、それは私たちにはまったく大事なことではありません。私は会談であなたとお会いするのをとても楽しみにしていました。残念ながら、あなたの最新発言が示した強烈な怒りとあからさまな敵対心を踏まえると、長く計画を重ねてきたこの会談を、現時点で実施するのは、不適切だと感じます。そのため、この書簡をもってシンガポール首脳会談は、双方の利益のために、ただしそれは世界の不利益ですが、実現しないとご理解ください。あなたは自分の核能力の話をしますが、我々のはあまりに巨大で強力なので、決して使わずに済むよう私は神に祈ります。

あなたとの間に素晴らしい対話が築かれつつあると感じていましたし、究極的に大事なのはその対話だけです。いつの日か、ぜひともお会いしたいと願っています。それまでの間、もうすでに家族と共にいる捕虜の解放に感謝します。あれは素晴らしい対応で、とてもありがたく思っています。

なにより大事なこの首脳会談について、もし考えが変わるようでしたら、ぜひ遠慮なく私に電話するなり手紙を書くなりしてください。世界と、そして特に北朝鮮は、永続的な平和と素晴らしい繁栄、そして富を得る、素晴らしい機会を失いました。この失われた機会は歴史において本当に悲しい瞬間です」

https://twitter.com/WhiteHouse/status/999647796218269697

これに先駆けて24日には、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が、マイク・ペンス米副大統領を「愚か」、「政治的なまぬけ」などと非難。自分たちが米国に首脳会談の実施を「懇願」することはないし、外交が失敗した場合には「核による最終決戦」の可能性があると警告した。トランプ大統領は、崔外務次官のこの発言に反応したものと思われる。

ペンス副大統領は21日、金委員長が米国との取引に合意しなければ、北朝鮮は「リビア方式が終わったように終わるしかない」と発言していた。これは、2003年にリビアのカダフィ政権が制裁解除と引き換えに大量破壊兵器の開発放棄を約束し、国際機関の査察を受け入れた後、2011年に政権が崩壊し、最高指導者のカダフィ大佐が殺害された経緯を意味するものと広く受け止められた。

ロイター通信によるとホワイトハウス関係者は、ペンス副大統領についての北朝鮮側の発言が「最後のわら」で、我慢の限界を超えたと話している。ただし、政府筋は「まだ開いている裏口はある」とも強調した。

トランプ大統領の書簡が発表される数時間前には、北朝鮮が北東部プンゲリ(豊渓里)にある国内唯一の核実験場で、坑道を爆破したと発表していた。現地入りしている米英韓中ロ5カ国の外国メディアが、大きな爆発を見たと伝えていた。ただし実験場は昨年9月の核実験で一部崩落し、すでに使えなくなっていたとも言われていた。

サミット中止への反応は

4月27日に金委員長と南北首脳会談を実施したばかりの韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、トランプ氏の発表を検討するため、安全保障担当の側近と協議に入った。

聯合通信によると、韓国大統領府の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は、「トランプ大統領の意図と、その正確な意味を把握しようとしている」と述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、首脳会談中止を「深く懸念している」とコメントし、「朝鮮半島の平和的かつ検証可能な非核化に向けた道筋を見出すため、双方には引き続き対話を継続するよう求める」と促した。

米国では共和党のトム・コットン上院議員が、「金正恩の詐欺を見抜いた」とトランプ大統領の判断を称賛した。しかし民主党のブライアン・シャッツ上院議員は、大統領の対応は「素人と戦争屋が合わさる」とこういうことになるのだと非難した。


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<解説> 外交はボロボロ――ジョナサン・マーカスBBC外交担当編集委員

トランプ政権は、首脳会談の準備に北朝鮮が十分に反応していなかったと主張する。そのため、たとえ首脳会談を実施しても前向きな結果が出たか疑わしいと。

では、これからどうなるのか。それが最大の問題だ。

首脳会談実施が決まる先駆けとなったのは、南北間の緊張緩和だった。しかしその前には、北朝鮮と米国の間でとんでもなく野放図な中傷が飛び交い、朝鮮半島における紛争再発の恐れが真剣に募っていたのだ。

これを機に北朝鮮は、長距離弾道ミサイルの実験を再開するのだろうか? 中傷合戦も再開するのか? あるいは、何らかの外交プロセスが継続する可能性が、わずかながらでもあるのだろうか?

(英語記事 Trump cancels Kim summit amid North Korea 'hostility'