尾関謙一郎(ジャーナリスト、広報アナリスト)

 5月23日に行われた日本大アメリカンフットボール部の内田正人前監督らの記者会見を見た企業広報の関係者は異口同音に「あきれた」と語る。広報部の司会者と記者のやりとりについては「記者会見は火消しの意味もあるだろうに、あれでは火に油どころか火にガソリンだ」との声もあった。ある企業では広報責任者が部下の二十数人全員に日大の会見の動画を見るように命じたという。もちろん、反面教師としてである。

 日大広報の立ち遅れは目に余る。まず、最初は同月6日に動画サイト「ユ―チューブ」に動画が上がったときに、広報が誰も気が付かなかったことだ。「大学の広報だから迂闊(うかつ)でもやむをえない」という言い訳はできない。日大は学生数8万人弱のマンモス大学である。

 次いで、同月12日の関西学院大の鳥内秀晃監督らによる抗議会見などもあり、テレビを中心に大々的に報道されるも、日大側は木で鼻をくくるコメントを出しただけだった。本来であれば、大学法人幹部、学長といわないまでも副学長のいずれかが、素早く会見するのが広報の常道だ。

 日大も世間も驚いたのが、同月22日に行われた日大アメフト部、宮川泰介選手の会見だ。通常では選手が矢面に立ち、会見を開くなど考えられない。弁護士もこれまでなら「訴追の恐れあり」として止めるだろう。彼の弁護士はその点、広報マインドがあったと思われる。実名でしかも堂々と記者会見を開かせた。弁護士間に広報マインドが高まることは、広報関係者には朗報である。この会見は今後、見本の一つとなるだろう。
記者会見する日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(右)と井上奨コーチ=2018年5月23日、東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影)
記者会見する日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(右)と井上奨コーチ=2018年5月23日、東京都千代田区(宮崎瑞穂撮影)
 一方、日大は翌日、慌てて内田前監督らの記者会見を開く。司会者の言動や会見の内容から見て「Q&A集(想定問答集)」が詳細に作られた形跡はない。もっぱら、内田前監督側、大学側の訴追を恐れる姿勢がありありと感じられた。弁護士の考え方に沿ったアドバイスはあったのだろうか。

 こうした日大の姿勢、会見を開かず、また開いても逃げに徹するという考え方は、過去に田中英壽理事長をめぐる疑惑が報じられた際の日大広報の姿勢が継続されていると見ることができる。広報は「地下にこもって騒ぎが過ぎ去るのを待つ」姿勢だ。これまでの日大だったなら、それでも通用したのかもしれない。しかし、こうした姿勢が今後も通用するとは考えにくい。