杉江義浩(ジャーナリスト、放送プロデューサー)

 5月6日の試合で日本大アメリカンフットボール部の選手が、悪質な危険行為をした責任をめぐり、23日夜、内田正人前監督と井上奨(つとむ)前コーチの記者会見が行われました。私は始終中継を見ていましたが、この会見の内容がひどすぎて、我が目を疑うほどでした。

 ネットでも拡散し、おそらく世間の日大に対する評価も、地に落ちたと思われます。25日に大塚吉兵衛学長も会見しましたが、遅きに失したと言えるでしょう。

 もともと私はスポーツにおけるラフプレーには、かなり寛容な方です。アメリカンフットボールのようなフルコンタクト系(選手同士が直接身体でぶつかる)ではなく、サッカーやバスケットのようなセミコンタクト系のスポーツでも、反則ギリギリの接触で有利にプレーするのは、暗黙の了解でもあります。

 しかし、今回の対関西学院大戦で、日大の宮川泰介選手が行った危険行為は、「スポーツにおける反則」とは違う次元の、犯罪や暴行に相当する事件でした。

 野球で言えば、打席に相手側のエースピッチャーが立ったとき、頭をめがけてデッドボールを投げる行為のようなもの。相撲で言えば勝負がついた後、控え室に戻ろうとする力士に、追いかけていって飛びかかるようなもので、もはや犯罪です。

 それだけに23日の日大アメフト部の謝罪会見は、スポーツ界全体からも一般国民からも、大きな注目が集まっていました。そもそも会見を開くのに3週間も日数をかけていること自体、対応のまずさを示していますし、前日の宮川選手本人による誠意を感じさせる会見があって、それを受けるかたちで遅れて会見を開いたというのも段取りが悪すぎます。

 記者会見で問題にされる要点は、宮川選手本人が、自らの選手生命を絶つ覚悟までして告白したものです。「クオーターバックをつぶしてきます、と監督に言え。そうしたら試合に出してやる」という指示を受けたこと、そして「試合が始まってから、できませんでした、では通用しないぞ」というプレッシャーを与えられたことです。これは監督、コーチが直接問題の危険行為を指示していた、ということを意味しています。それを明らかにするための記者会見だったのです。

日大の田中英壽理事長
=2014年5月(小倉元司撮影)
 しかし、記者会見が始まってみると、「クオーターバックをつぶすくらいの気持ちで、全力で試合に臨めという言葉は激励にすぎなかった」とか「相手選手にけがをさせるようなプレーは指示していません」といった監督自らの保身、責任逃れに終始する、およそスポーツマンらしからぬ異様な展開になっていました。

 司会を務めた日大広報部の米倉久邦氏の、とんちんかんな司会進行の声が目立ち、しきりに質問を食い止めようとする姿から、それが逆に記者たちに不信感を植え付けることになりました。
 
 日大の中でも田中英壽理事長、常務理事で実質ナンバー2である内田前監督、そして広報も含めた組織としてのバラバラなコーポレートガバナンスが、その背景にあると思います。組織の力は組織を守る方向で作用します。保身一辺倒になってしまった日大の首脳陣は、スポーツマンとしての健全な思考感覚を完全に失っていました。