杉山崇(神奈川大人間科学部教授)

 日本大アメリカンフットボール部の反則指示事件を受けて、大学教育のあり方が問われています。ただ、事態は内田正人前監督の反則指示をめぐる記者会見を経て、思わぬ方向に展開してしまいました。内田前監督の会見内容や大学当局の姿勢に、各界から厳しい批判が向けられただけではなく、司会の日大広報部顧問による報道陣への不遜な態度にも非難の声が集まっています。
 
 司会を務めた米倉久邦氏は、会見から1時間半を回ったところから会見の打ち切りに入ったとされています。司会者は会場のタイムテーブルや登壇者の心身の安全に配慮する義務を持っています。会見内容はともあれ、内田前監督や井上奨(つとむ)前コーチの疲労やタイムマネジメントを考えれば、終了を企図することそのものは間違ったことではないでしょう。

 しかし、参加者が納得しない形で強制的に打ち切るとなると、話は別です。場が荒れないように配慮する義務も司会者にはあるからです。ところが米倉氏は、井上前コーチが「心の痛みはありませんか?」という質問に答えようと考えている最中に、突然「もうこれで終わりにしたいと思います」と切り出しました。

 まだまだ聴きたいことがある記者たちが乱暴な打ち切り方に納得するはずがありません。「会見を続ける、続けない」をめぐって双方が激しい舌戦となり、司会者自らが場を荒らすことになりました。

 「会見の主役は司会の米倉氏だった」と皮肉めいた評価も受けています。ここでは、「大学広報部のミッション」「大学風土」「人が不遜になる脳」をキーワードに、心理学的背景からこの問題について考えてみましょう。

 米倉氏は元共同通信社の記者で、在職中は経済部長やニュースセンター長、論説委員長といった要職も務めた経歴を持っています。定年退職後は、フリーのジャーナリストとして多くの著書もあります。どのような経緯で日大の職員になったかわかりませんが、「マスコミ対応のプロ」として採用されていると察することができます。
日本大アメリカンフットボール部の内田正人前監督の会見後、報道陣に囲まれる司会を務めた広報部の米倉久邦氏=2018年5月23日、東京都千代田区(松本健吾撮影)
日本大アメリカンフットボール部の内田正人前監督の会見後、報道陣に囲まれる司会を務めた広報部の米倉久邦氏=2018年5月23日、東京都千代田区(松本健吾撮影)
 本来、大学の広報部は大学のブランドイメージを向上させることが任務です。果たして、米倉氏は日大の期待通り、マスコミ対応のプロとして日大のイメージを守ることができたのでしょうか。

 司会者は場で流れる情報をコントロールする役割です。米倉氏は日大広報部所属として司会をしたので、もちろん日大に不利な情報が流れそうな局面は避ける必要があります。あのまま会見を続けると、監督が日大のブランドイメージを大きく損ねる発言をしそうな状況だったら、打ち切りに向けて和やかに場を誘導することは間違ってはいないのです。これこそがまさに広報部の任務です。