ですが、内田前監督も日大当局もすでに激しく批判されている状況です。しかも「心の痛みはありませんか?」という問いだったので、これ以上イメージを悪くする情報が流れるとは考えにくい場面でした。となると、広報部のミッションとして打ち切りに向かう必要があったとも考えにくいところです。

 大学のイメージを守るという意味で、米倉氏は「あなたの発言で日大のブランドが落ちるかもしれないんですよ」と心配する記者の声にも「落ちません!」と断言してしまいました。人は確信のある人間に引かれますが、日本は自信過剰な人間が嫌われる「謙遜の文化」です。

 したがって、米倉氏の発言は、大学の広報部職員として適切でない、大変リスキーのように思えます。つまり、強引な打ち切り方もその後の舌戦も「大学広報部におけるマスコミ対応のプロ」として戦略のある行動ではなかったと考えられます。
 
 では、何が彼をこのような行動に駆り立てたのでしょうか。私には大学という風土と彼自身の個性が掛け合わされていたように見えます。

 まず、企業風土という観点から大学を考えると、一般的には「長期目標を持ち相対的に従業員の自由度が高い」「伝統や慣習に誇りを持って尊重する」という特徴があります。私はこのような風土を「仲良しクラブ型」と呼んでいます。

 変化が乏しく仕事にスピード感を求められないのでお互いを気にする余裕があり、仲良くしていないと居心地が悪くなるのです。特に誇り高い企業の場合は、視野も狭くなり「わが社には揺るぎない地位がある」という大企業病のようなマインドが漂うこともあります。
東京都千代田区にある日本大学=2018年5月23日(佐藤徳昭撮影)
東京都千代田区にある日本大学=2018年5月23日(佐藤徳昭撮影)
 日大は数々の「時代への挑戦」を打ち出している大学なので企業不全病、いわゆる「大企業病」には陥っていないと思います。ただ、圧倒的な伝統と規模を誇る大学なだけに、病に陥りやすい要素があったかもしれません。

 日大全体としては健全だと思いますが、ここまで規模が大きいと、ごく一部には大企業病的なマインドが生まれていたのかもしれません。まさに企業風土の問題の表れだったのが、米倉氏の「落ちません!」発言ではないでしょうか。